*
あれから、十年。
早乙女くんがパラレルワールドに帰ってしまってから、もう大分時が経っていた。
今思い返せば夢だったのかも、なんて思うときがある。だけど心に残っている早乙女くんやみんなとの数々の思い出は、本物だった。
わたしは家族が望んでいた弁護士ではなく、小説家として仕事をしている。
自分がやりたかったことを見つけられたのも、早乙女くんとの出会いがきっかけだ。
……早く、早乙女くんに会いたいな。
パラレルワールドの装置は不備があったため使えなくなってしまったから、行き来することもできなくなってしまったのだ。
そんなことを考えながら、わたしはテレビの電源をつけた。
*
『ニュースです。ついにパラレルワールドを行き来できる装置が世界各国に導入されました。その装置を作ったのはなんと、十年前にパラレルワールドへ行けるきっかけを作った早乙女さんご夫婦の息子さんだそうです。早乙女悠さん、今のお気持ちは?』
『やっと十年前からの願いを果たせることができて、とても嬉しい気持ちです。大変だったけれど、この装置でいろいろな世界の人々が良い経験をしていただけたら良いなと思います』
『ほう、悠さんにとって、パラレルワールドを行き来する装置を作るのは十年前からの願いだったんですね。もしかして何か目的があるのですか?』
『はは、そうですね。恥ずかしながら……約束を、果たしに行きます』
*
テレビの電源を急いで消して、わたしは家を飛び出す。
町中にはもうパラレルワールドから来た人々がたくさんいるみたいだった。
「愛音さん!」
「小雪ちゃん、おはよう! あの、パラレルワールドを行き来できる装置、って」
「そう言うと思って、もうその装置がある場所は調べ済みですよ。電車で行ける距離みたいです」
「本当に! さすが小雪ちゃん、ありがとう!」
小雪ちゃんからパラレルワールドを行き来できる装置がある場所が書かれている紙をありがたく受け取った。
「じゃあ行ってくるね」
「あっ、愛音さん!」
「どうしたの?」
小雪ちゃんは涙を目に止めながら、
「おめでとうございます、夢が叶って」
と言ってくれた。
わたしは小雪ちゃんをそっと抱きしめる。
「どうして小雪ちゃんが泣くの?」
「だって愛音さんずっと言ってたから、早乙女先輩のこと……。もう用が済んだら、わたし愛音さんと友達でいられなくなっちゃうのかなって心配で」
「……小雪ちゃんのおかげだよ。いろいろ本当にありがとう。でもわたしは小雪ちゃんとこれからも友達でいたいと思ってるよ。あの頃からずっと助けてもらってるから、恩返しさせて」
「愛音さん……!」
どうやらもっと泣かせてしまったみたいだ。
でも小雪ちゃんとこれからも友達でいたいっていう気持ちは、本当のことだもん。
「これからも、愛音さんはわたしの憧れの先輩です」
「あはは、ありがと。わたしも自慢の後輩だよ。……あ、いっけない! もうすぐ時間だ!」
「すみません、呼び止めちゃって。愛音さんを彼氏に取られてしまうのは悲しいけど、仕方ないですよね」
そんなふうに言われると、変に緊張してしまう。
「彼氏、か……」
「そうですよ、自信持って会ってきてくださいね。行ってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
わたしは駆け出した。十年前の約束を果たしにいくために。
ゆらゆら揺れる電車のなかで、ふと思う。何だかこの甘い気持ちがあの頃と変わらなくて、懐かしいと。
好きな人に会えるって、こんな感じだったんだね。あの頃は必死で全然気がつかなかった。
あなたも、そう思ってくれているのかな。
『次は、終点、〇〇駅。お出口は、右側ですーー』
ふわふわした夢のような気分で、改札を出る。
するとそこには、新しいパラレルワールドの装置が置いてあった。
さすが都会、こんなにも目立つところにあるのか。
キョロキョロ周りを見渡しても、彼の姿はなかった。
がっくりと肩を落とした瞬間、背後からトントンと叩かれた。
「はいーー」
振り向くと、彼の姿があった。十年前の面影があって、すぐに分かった。
……早乙女くんだ。本当に、本人なんだ。
「早乙女、くん?」
「お待たせ、水川。遅くなってごめん」
「……ほんとう、だよ。十年間、ずっと、待ってたんだよ」
声が震える。
思わず涙も溢れてきてしまった。
「ありがとう、ずっと待っててくれて。ただいま」
「うん……っ、おかえり!」
ねぇ、あなたも今もしかして、辛いことや苦しいこと、悲しい気持ちを抱えているんじゃない?
でもね、きっと大丈夫。わたしもそうだったけど、今はこんなにもあたたかくて幸せだから。
だって、こんなにも世界は広くて繋がっているのだから。
未来はきっと、あなたを待ってる。
だから、一緒に踏み出そうーー……!
あれから、十年。
早乙女くんがパラレルワールドに帰ってしまってから、もう大分時が経っていた。
今思い返せば夢だったのかも、なんて思うときがある。だけど心に残っている早乙女くんやみんなとの数々の思い出は、本物だった。
わたしは家族が望んでいた弁護士ではなく、小説家として仕事をしている。
自分がやりたかったことを見つけられたのも、早乙女くんとの出会いがきっかけだ。
……早く、早乙女くんに会いたいな。
パラレルワールドの装置は不備があったため使えなくなってしまったから、行き来することもできなくなってしまったのだ。
そんなことを考えながら、わたしはテレビの電源をつけた。
*
『ニュースです。ついにパラレルワールドを行き来できる装置が世界各国に導入されました。その装置を作ったのはなんと、十年前にパラレルワールドへ行けるきっかけを作った早乙女さんご夫婦の息子さんだそうです。早乙女悠さん、今のお気持ちは?』
『やっと十年前からの願いを果たせることができて、とても嬉しい気持ちです。大変だったけれど、この装置でいろいろな世界の人々が良い経験をしていただけたら良いなと思います』
『ほう、悠さんにとって、パラレルワールドを行き来する装置を作るのは十年前からの願いだったんですね。もしかして何か目的があるのですか?』
『はは、そうですね。恥ずかしながら……約束を、果たしに行きます』
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テレビの電源を急いで消して、わたしは家を飛び出す。
町中にはもうパラレルワールドから来た人々がたくさんいるみたいだった。
「愛音さん!」
「小雪ちゃん、おはよう! あの、パラレルワールドを行き来できる装置、って」
「そう言うと思って、もうその装置がある場所は調べ済みですよ。電車で行ける距離みたいです」
「本当に! さすが小雪ちゃん、ありがとう!」
小雪ちゃんからパラレルワールドを行き来できる装置がある場所が書かれている紙をありがたく受け取った。
「じゃあ行ってくるね」
「あっ、愛音さん!」
「どうしたの?」
小雪ちゃんは涙を目に止めながら、
「おめでとうございます、夢が叶って」
と言ってくれた。
わたしは小雪ちゃんをそっと抱きしめる。
「どうして小雪ちゃんが泣くの?」
「だって愛音さんずっと言ってたから、早乙女先輩のこと……。もう用が済んだら、わたし愛音さんと友達でいられなくなっちゃうのかなって心配で」
「……小雪ちゃんのおかげだよ。いろいろ本当にありがとう。でもわたしは小雪ちゃんとこれからも友達でいたいと思ってるよ。あの頃からずっと助けてもらってるから、恩返しさせて」
「愛音さん……!」
どうやらもっと泣かせてしまったみたいだ。
でも小雪ちゃんとこれからも友達でいたいっていう気持ちは、本当のことだもん。
「これからも、愛音さんはわたしの憧れの先輩です」
「あはは、ありがと。わたしも自慢の後輩だよ。……あ、いっけない! もうすぐ時間だ!」
「すみません、呼び止めちゃって。愛音さんを彼氏に取られてしまうのは悲しいけど、仕方ないですよね」
そんなふうに言われると、変に緊張してしまう。
「彼氏、か……」
「そうですよ、自信持って会ってきてくださいね。行ってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
わたしは駆け出した。十年前の約束を果たしにいくために。
ゆらゆら揺れる電車のなかで、ふと思う。何だかこの甘い気持ちがあの頃と変わらなくて、懐かしいと。
好きな人に会えるって、こんな感じだったんだね。あの頃は必死で全然気がつかなかった。
あなたも、そう思ってくれているのかな。
『次は、終点、〇〇駅。お出口は、右側ですーー』
ふわふわした夢のような気分で、改札を出る。
するとそこには、新しいパラレルワールドの装置が置いてあった。
さすが都会、こんなにも目立つところにあるのか。
キョロキョロ周りを見渡しても、彼の姿はなかった。
がっくりと肩を落とした瞬間、背後からトントンと叩かれた。
「はいーー」
振り向くと、彼の姿があった。十年前の面影があって、すぐに分かった。
……早乙女くんだ。本当に、本人なんだ。
「早乙女、くん?」
「お待たせ、水川。遅くなってごめん」
「……ほんとう、だよ。十年間、ずっと、待ってたんだよ」
声が震える。
思わず涙も溢れてきてしまった。
「ありがとう、ずっと待っててくれて。ただいま」
「うん……っ、おかえり!」
ねぇ、あなたも今もしかして、辛いことや苦しいこと、悲しい気持ちを抱えているんじゃない?
でもね、きっと大丈夫。わたしもそうだったけど、今はこんなにもあたたかくて幸せだから。
だって、こんなにも世界は広くて繋がっているのだから。
未来はきっと、あなたを待ってる。
だから、一緒に踏み出そうーー……!



