夏休みが明け、わたしは学校へ向かった。
まだパラレルワールドで最後にちゃんとみんなに挨拶できなかったことを後悔しているけれど、前を向かないと、と思い足を前に出した。
夏休み中、早乙女くんにメッセージを送っても既読がつかないまま今日になってしまった。不安になりながらも、学校で会えるからいいかと思った。
「水川さん、おはよう」
「おはよう」
教室へ行っても、早乙女くんはまだ登校してきていなかった。
わたしは読書をしながら、クラス中がざわついていたのが気になっていた。
やがてホームルームの時間になった。それでも早乙女くんは来なかった。
「みんな、おはよう。今日はひとつ報告したいことがある」
なんだろう。次のテストの範囲とか?
「実は……早乙女が、行方不明になったそうだ」
「えっ」
思わず言葉を発してしまった。
……いま、先生、早乙女くんが行方不明になったって言ったよね?
聞き間違いなんかじゃないはず。
「おととい、早乙女のご家族から電話があってな。警察にも捜索願いを出したそうだ。クラスメイトにも伝えてくれってお願いされた」
「先生、早乙女は無事なんすかー?」
「分からないが、早乙女なら大丈夫だと俺は信じてる」
先生なんかの言うことを信じてばかりいられない。
わたしはすぐにスマートフォンを出し、早乙女くんに連続でメッセージを送る。
『大丈夫? 早乙女くん、行方不明になってるよ』
『早く学校来てね。みんな待ってる』
それでも、わたしが夏休み中に送ったメッセージも既読がつかないままだった。
昼休み、わたしは髪を整えるためトイレに向かった。
入ろうとした途端、女子たちの話し声が聞こえてきて反射的に足を止めてしまう。
「ねぇ、早乙女くん、大丈夫かな」
「転校してきてから変わってる子だなぁって思ってたけど、さすがに行方不明ってなると心配だよね」
どうやら早乙女くんの話をしているらしい。
「ていうかウチ、見ちゃったんだよね」
「何を?」
「夏休み始まってすぐだったかな。早乙女くんと水川さんが歩いてたの」
「えっ、水川さん!?」
えーーわたし?
夏休みが始まってすぐということは、パラレルワールドに行ったり来たりしているときだろうか。
偶然、早乙女くんと歩いているところを見られてしまったのだ。
「おかしいよね? いかにも不良って感じの早乙女くんと、優等生の水川さんが一緒に歩いてるのって」
「おかしいね。水川さん、早乙女くんに何か脅されてるんじゃない? 弱み握られてるとかさ」
「あー、ありそう。だってそんな感じだもんね、早乙女くん」
……違うよ。みんな、誤解しないで。
早乙女くんはそんなことする人じゃない。
「じゃあさ、早乙女くんが行方不明になった理由も水川さんなら知ってるんじゃない?」
「え、そうかも! 聞いてみる?」
「んー、でも、水川さんって近寄りがたいし。ウチらとなんか喋らないって。次元が違うんだから」
「それもそうだねー。でも気になるよー」
わたし、そんなふうに思われてたんだ。
だから友達もできないし、誰とも親しい仲にはなれないんだ。
わたしは、足を一歩ずつ前に出した。
「み、水川さん」
「今の話、もしかして聞いてた……?」
「うん、聞いてた」
そうハッキリ答えた。
「ご、ごめんなさい、水川さんのこと尊敬してるから、話しかけにくいって意味で」
「そうそう、本当にごめんなさい」
「それはいいよ。でも、早乙女くんのことは悪く言わないで。彼はそんな人じゃないの。わたしに……チャンスをくれた人だから。それにわたしも早乙女くんの居場所は知らないの……ごめんね」
そう言うと、女の子たちは何も言わずにトイレから去っていった。
わたし、ちょっと感じ悪かったかな。だからいつまで経っても友達ができないんだろうなぁ。
……全部、早乙女くんの言う通りだったね。わたしは今までいい子ちゃん笑顔を振りまいてた、ずっと。
どうして早乙女くんは行方不明になってしまったの……?
落ち込みながら教室に戻ると、ある人物がドアの前で立っていた。
「あ……水川先輩」
「小雪、ちゃん?」
そう。小雪ちゃんが、何故かわたしの教室に来ていた。
誰か呼びに来たのだろうかと思ったけれど、小雪ちゃんはわたしのほうに駆け寄ってきた。
「急に教室まで来てしまってすみません。あの……早乙女先輩のこと、聞きましたか?」
「早乙女くん? うん……行方不明になったこと、だよね」
「はい、そうです。やっぱり早乙女先輩、行方不明ってことになってるんですね」
その言い方だと、早乙女くんは本当は行方不明じゃない、というふうに聞こえる。
「小雪ちゃん……あ、いや、工藤さん」
「小雪で大丈夫です。……愛音先輩」
「え、う、うん」
「愛音先輩。今から話すこと、驚かないでください。そして誰にも言わないでくださいね」
小雪ちゃんの真剣な瞳を見ると、今から何か深刻なことを話してくれるに違いないと思った。
わたしは頷く。
「ありがとうございます。実は、わたしも……愛音先輩と同じで、パラレルワールドとこの世界を行き来してました」
「えっ……そ、それって、イラスト部、の?」
「そうです。璃奈や梨央先輩、坂井先輩たちと一緒に活動していた工藤小雪は、わたしなんです」
衝撃の事実に、思わず口をあんぐりと開けてしまう。
そういえば以前、有紗が『小雪先輩が水川先輩元気? って聞いてきた』と言っていた。
どうして関わりのないわたしを気にかけてくれるのかと不思議だったけど、パラレルワールドで同じ部活で話していたからだったんだ。
「どうして……どうして、わたしが向こうの世界にも行ってるって分かったの?」
「この世界で会う先輩と、同じように見えたからです。それにパラレルワールドの話になったとき少し動揺してましたから。確信は持てなくてすぐに言えなくて、すみません」
「ううん、わたしこそ、今まで気づけなくてごめんね」
そうだ。それで、どうして早乙女くんのことが関係しているのだろう?
「早乙女先輩も、パラレルワールドのこと、ご存知なんですよね。実は、わたしの親もパラレルワールドの研究者で、早乙女先輩のご両親と同期なんです」
「え、そうだったの? もしかして、小雪ちゃんの家にも装置があるの?」
「そうなんです。わたしは自分の家から行ってました。愛音先輩は早乙女先輩の家からですよね」
「う、うん」
まさか小雪ちゃんが早乙女くんの家にある装置のことを知っているなんて。
わたしをからかってパラレルワールドのことを話しているわけではないことが分かる。
「それで、早乙女くんは……」
「早乙女先輩、夏休みにパラレルワールドへひとりで行ったみたいなんです」
「えっ、そうなの?」
「はい、うちの両親から聞きました。でも……それっきり、帰ってこないらしくて」
どうして、早乙女くんはひとりでパラレルワールドに……?
そんなこと、わたしは聞いていない。
「だから、もしかしたらこの世界に帰れなくなってるのかなって。それか、帰りたくない、とか」
「でも、それだったらどうしてこの世界には早乙女くんがいないの? パラレルワールドの早乙女くんと入れ替わってるはずだよね?」
「たぶん、ですけど……この世界の早乙女先輩と入れ替わったパラレルワールドの早乙女先輩は、どこかに隠れているんだと思います」
なるほど。
だから行方不明ということになっているのか。
でも、だとしたらその理由は?
「この世界の早乙女先輩に、何か言われたのかもしれません。隠れていてほしい理由とか」
「それは、本人に聞かないと分からないよね……?」
「そうですね。わたしもそう思います。だから、愛音先輩に相談したんです。一緒に見つけてほしいって」
小雪ちゃんは、真剣だった。
どうしてそこまで早乙女くんにこだわるんだろう。
その疑問が伝わったのか、小雪ちゃんは口を開いた。
「わたし、ずっとこの世界が嫌いだったんです。親友の璃奈はバスケが上手くて、後輩の指導もできて。わたしは弱いから、臆病だから、そんな璃奈のこと嫉妬してたんです」
「あ……」
わたしと、似てる。梨央に対するわたしの気持ちと。
「だからパラレルワールドに行くことに決めました。だけど、それでも璃奈には到底かなわなかった。わたしはどこへ行っても同じなんだ……って、がっかりしてたんです。そんなとき、愛音先輩に出会いました」
「わたし、に?」
「はい。先輩は何事も完璧で、クールで、天才なんだと思ってました。パラレルワールドで会った愛音先輩は、梨央先輩のことをずっと見てましたよね。そのときに思ったんです。この人、わたしと似てる……って。愛音先輩も、嫉妬なんかするんだって」
あ、悪い意味で言ったんじゃなくて、良い意味で意外だと思ったんです、と小雪ちゃんは慌てて説明してくれた。
「だから、わたしは愛音先輩に救われました。自分と同じ境遇の人が近くにいるって分かったら、何だか自信が溢れてきたんです。この世界でも生きていけるような感じがしました。本当にありがとうございます」
「いやいや、そんな、わたしは何もしてないよ。それは小雪ちゃん自身が強くなれた証だよ」
「……やっぱり先輩は、優しいんですね」
わたしは微笑んだ。
「だから、何か先輩の役に立ちたい、そう思いました。思いついたのは、先輩の好きな人を救うことだったんです」
「え、す、好きな人って……! な、何で知ってるの!?」
「すみません。パラレルワールドで梨央先輩と話してたの聞いちゃったんです。早乙女先輩のこと、好きなんですよね」
「……うん」
素直に、頷いた。
小雪ちゃんなら、馬鹿になんてしないって信じているから。
「だから、お手伝いさせてください。愛音先輩」
「……いいの? 小雪ちゃんにも、すごく迷惑が掛かることになっちゃうよ」
「はい。わたしは、愛音先輩のこと、憧れてますから」
憧れ、か。
後輩がわたしのことをそういうふうに言ってもらえることなんか、これまでにも多々あった。だけどそれは、わたしの外面しか見ていないと分かっていたから、素直に喜べなかった。
だけど小雪ちゃんは、わたしの性格を知っていてもそう言ってくれる。それはとても嬉しかった。
「じゃあ……改めてよろしくね。小雪ちゃん」
「はい! こちらこそ、お願いします」
待っててね、早乙女くん。
今度こそ、あなたにーーわたしの気持ち、伝えたいから。
まだパラレルワールドで最後にちゃんとみんなに挨拶できなかったことを後悔しているけれど、前を向かないと、と思い足を前に出した。
夏休み中、早乙女くんにメッセージを送っても既読がつかないまま今日になってしまった。不安になりながらも、学校で会えるからいいかと思った。
「水川さん、おはよう」
「おはよう」
教室へ行っても、早乙女くんはまだ登校してきていなかった。
わたしは読書をしながら、クラス中がざわついていたのが気になっていた。
やがてホームルームの時間になった。それでも早乙女くんは来なかった。
「みんな、おはよう。今日はひとつ報告したいことがある」
なんだろう。次のテストの範囲とか?
「実は……早乙女が、行方不明になったそうだ」
「えっ」
思わず言葉を発してしまった。
……いま、先生、早乙女くんが行方不明になったって言ったよね?
聞き間違いなんかじゃないはず。
「おととい、早乙女のご家族から電話があってな。警察にも捜索願いを出したそうだ。クラスメイトにも伝えてくれってお願いされた」
「先生、早乙女は無事なんすかー?」
「分からないが、早乙女なら大丈夫だと俺は信じてる」
先生なんかの言うことを信じてばかりいられない。
わたしはすぐにスマートフォンを出し、早乙女くんに連続でメッセージを送る。
『大丈夫? 早乙女くん、行方不明になってるよ』
『早く学校来てね。みんな待ってる』
それでも、わたしが夏休み中に送ったメッセージも既読がつかないままだった。
昼休み、わたしは髪を整えるためトイレに向かった。
入ろうとした途端、女子たちの話し声が聞こえてきて反射的に足を止めてしまう。
「ねぇ、早乙女くん、大丈夫かな」
「転校してきてから変わってる子だなぁって思ってたけど、さすがに行方不明ってなると心配だよね」
どうやら早乙女くんの話をしているらしい。
「ていうかウチ、見ちゃったんだよね」
「何を?」
「夏休み始まってすぐだったかな。早乙女くんと水川さんが歩いてたの」
「えっ、水川さん!?」
えーーわたし?
夏休みが始まってすぐということは、パラレルワールドに行ったり来たりしているときだろうか。
偶然、早乙女くんと歩いているところを見られてしまったのだ。
「おかしいよね? いかにも不良って感じの早乙女くんと、優等生の水川さんが一緒に歩いてるのって」
「おかしいね。水川さん、早乙女くんに何か脅されてるんじゃない? 弱み握られてるとかさ」
「あー、ありそう。だってそんな感じだもんね、早乙女くん」
……違うよ。みんな、誤解しないで。
早乙女くんはそんなことする人じゃない。
「じゃあさ、早乙女くんが行方不明になった理由も水川さんなら知ってるんじゃない?」
「え、そうかも! 聞いてみる?」
「んー、でも、水川さんって近寄りがたいし。ウチらとなんか喋らないって。次元が違うんだから」
「それもそうだねー。でも気になるよー」
わたし、そんなふうに思われてたんだ。
だから友達もできないし、誰とも親しい仲にはなれないんだ。
わたしは、足を一歩ずつ前に出した。
「み、水川さん」
「今の話、もしかして聞いてた……?」
「うん、聞いてた」
そうハッキリ答えた。
「ご、ごめんなさい、水川さんのこと尊敬してるから、話しかけにくいって意味で」
「そうそう、本当にごめんなさい」
「それはいいよ。でも、早乙女くんのことは悪く言わないで。彼はそんな人じゃないの。わたしに……チャンスをくれた人だから。それにわたしも早乙女くんの居場所は知らないの……ごめんね」
そう言うと、女の子たちは何も言わずにトイレから去っていった。
わたし、ちょっと感じ悪かったかな。だからいつまで経っても友達ができないんだろうなぁ。
……全部、早乙女くんの言う通りだったね。わたしは今までいい子ちゃん笑顔を振りまいてた、ずっと。
どうして早乙女くんは行方不明になってしまったの……?
落ち込みながら教室に戻ると、ある人物がドアの前で立っていた。
「あ……水川先輩」
「小雪、ちゃん?」
そう。小雪ちゃんが、何故かわたしの教室に来ていた。
誰か呼びに来たのだろうかと思ったけれど、小雪ちゃんはわたしのほうに駆け寄ってきた。
「急に教室まで来てしまってすみません。あの……早乙女先輩のこと、聞きましたか?」
「早乙女くん? うん……行方不明になったこと、だよね」
「はい、そうです。やっぱり早乙女先輩、行方不明ってことになってるんですね」
その言い方だと、早乙女くんは本当は行方不明じゃない、というふうに聞こえる。
「小雪ちゃん……あ、いや、工藤さん」
「小雪で大丈夫です。……愛音先輩」
「え、う、うん」
「愛音先輩。今から話すこと、驚かないでください。そして誰にも言わないでくださいね」
小雪ちゃんの真剣な瞳を見ると、今から何か深刻なことを話してくれるに違いないと思った。
わたしは頷く。
「ありがとうございます。実は、わたしも……愛音先輩と同じで、パラレルワールドとこの世界を行き来してました」
「えっ……そ、それって、イラスト部、の?」
「そうです。璃奈や梨央先輩、坂井先輩たちと一緒に活動していた工藤小雪は、わたしなんです」
衝撃の事実に、思わず口をあんぐりと開けてしまう。
そういえば以前、有紗が『小雪先輩が水川先輩元気? って聞いてきた』と言っていた。
どうして関わりのないわたしを気にかけてくれるのかと不思議だったけど、パラレルワールドで同じ部活で話していたからだったんだ。
「どうして……どうして、わたしが向こうの世界にも行ってるって分かったの?」
「この世界で会う先輩と、同じように見えたからです。それにパラレルワールドの話になったとき少し動揺してましたから。確信は持てなくてすぐに言えなくて、すみません」
「ううん、わたしこそ、今まで気づけなくてごめんね」
そうだ。それで、どうして早乙女くんのことが関係しているのだろう?
「早乙女先輩も、パラレルワールドのこと、ご存知なんですよね。実は、わたしの親もパラレルワールドの研究者で、早乙女先輩のご両親と同期なんです」
「え、そうだったの? もしかして、小雪ちゃんの家にも装置があるの?」
「そうなんです。わたしは自分の家から行ってました。愛音先輩は早乙女先輩の家からですよね」
「う、うん」
まさか小雪ちゃんが早乙女くんの家にある装置のことを知っているなんて。
わたしをからかってパラレルワールドのことを話しているわけではないことが分かる。
「それで、早乙女くんは……」
「早乙女先輩、夏休みにパラレルワールドへひとりで行ったみたいなんです」
「えっ、そうなの?」
「はい、うちの両親から聞きました。でも……それっきり、帰ってこないらしくて」
どうして、早乙女くんはひとりでパラレルワールドに……?
そんなこと、わたしは聞いていない。
「だから、もしかしたらこの世界に帰れなくなってるのかなって。それか、帰りたくない、とか」
「でも、それだったらどうしてこの世界には早乙女くんがいないの? パラレルワールドの早乙女くんと入れ替わってるはずだよね?」
「たぶん、ですけど……この世界の早乙女先輩と入れ替わったパラレルワールドの早乙女先輩は、どこかに隠れているんだと思います」
なるほど。
だから行方不明ということになっているのか。
でも、だとしたらその理由は?
「この世界の早乙女先輩に、何か言われたのかもしれません。隠れていてほしい理由とか」
「それは、本人に聞かないと分からないよね……?」
「そうですね。わたしもそう思います。だから、愛音先輩に相談したんです。一緒に見つけてほしいって」
小雪ちゃんは、真剣だった。
どうしてそこまで早乙女くんにこだわるんだろう。
その疑問が伝わったのか、小雪ちゃんは口を開いた。
「わたし、ずっとこの世界が嫌いだったんです。親友の璃奈はバスケが上手くて、後輩の指導もできて。わたしは弱いから、臆病だから、そんな璃奈のこと嫉妬してたんです」
「あ……」
わたしと、似てる。梨央に対するわたしの気持ちと。
「だからパラレルワールドに行くことに決めました。だけど、それでも璃奈には到底かなわなかった。わたしはどこへ行っても同じなんだ……って、がっかりしてたんです。そんなとき、愛音先輩に出会いました」
「わたし、に?」
「はい。先輩は何事も完璧で、クールで、天才なんだと思ってました。パラレルワールドで会った愛音先輩は、梨央先輩のことをずっと見てましたよね。そのときに思ったんです。この人、わたしと似てる……って。愛音先輩も、嫉妬なんかするんだって」
あ、悪い意味で言ったんじゃなくて、良い意味で意外だと思ったんです、と小雪ちゃんは慌てて説明してくれた。
「だから、わたしは愛音先輩に救われました。自分と同じ境遇の人が近くにいるって分かったら、何だか自信が溢れてきたんです。この世界でも生きていけるような感じがしました。本当にありがとうございます」
「いやいや、そんな、わたしは何もしてないよ。それは小雪ちゃん自身が強くなれた証だよ」
「……やっぱり先輩は、優しいんですね」
わたしは微笑んだ。
「だから、何か先輩の役に立ちたい、そう思いました。思いついたのは、先輩の好きな人を救うことだったんです」
「え、す、好きな人って……! な、何で知ってるの!?」
「すみません。パラレルワールドで梨央先輩と話してたの聞いちゃったんです。早乙女先輩のこと、好きなんですよね」
「……うん」
素直に、頷いた。
小雪ちゃんなら、馬鹿になんてしないって信じているから。
「だから、お手伝いさせてください。愛音先輩」
「……いいの? 小雪ちゃんにも、すごく迷惑が掛かることになっちゃうよ」
「はい。わたしは、愛音先輩のこと、憧れてますから」
憧れ、か。
後輩がわたしのことをそういうふうに言ってもらえることなんか、これまでにも多々あった。だけどそれは、わたしの外面しか見ていないと分かっていたから、素直に喜べなかった。
だけど小雪ちゃんは、わたしの性格を知っていてもそう言ってくれる。それはとても嬉しかった。
「じゃあ……改めてよろしくね。小雪ちゃん」
「はい! こちらこそ、お願いします」
待っててね、早乙女くん。
今度こそ、あなたにーーわたしの気持ち、伝えたいから。



