ココちゃんは三つのナベに分けたキイチゴに、さとうの半分をまぶしました。
「これでちょっと待つと、キイチゴから水が出るんだよ。そしたら弱い火にかけて、おさとうがしっかりしみたら残りも加えて煮つめていくの」
「え。もしかして、とっても時間がかかるってこと?」
「そうね。今日はジャムだけでおわっちゃうかな」
ナナはびっくりしました。
いつも見ている「チクタクック!」は、あっという間におわってしまいます。
ジャムをどうやって使うのかわかりませんが……いっしゅんの〈はむーん!〉でジャムの出番はとおりすぎてしまいそう。
「……ココちゃんて、すごいんだなぁ」
「あれ、なあにいきなり」
「材料をそろえるのって、こんなに時間がかかるんだ……わたし知らなかった」
ナナはまじめに言ったのです。でもココちゃんは「あっ」とあわてました。
「たいへん! ナナちゃん、そろそろ帰らなくちゃダメだよね?」
「え?」
「だってもう夕方よ?」
ココちゃんが窓の外を指さします。見ると言われたとおり、おひさまがかたむいていました。ナナはびっくりです。
(ええっ! なんで? さっきまでお昼みたいだったのに!)
でも、それもおかしいのです。
ナナは学校が終わってから、家で「チクタクック!」を見ていました。それだけで夕方になっていてもおかしくありません。
ココちゃんと、ハムまると。
森へ行ってキイチゴをつんで、戻ってきて。
たくさん楽しいことがあったのに、時間が進んでいなかったのでしょうか?
でもナナはなんだか納得しました。
(だってここは……ふしぎな「ひみつのお庭」だもん)
そう、ここはふしぎなところ。
動画の中のひみつの世界。
こんなすてきな場所に、ナナはどうして迷いこんだのでしょう?

