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「――ほら、ここよ!」
「わあ、ほんとだ!」
木立ちがひらけて広場になっているところにやってきました。
ぽっかりあいた草地には野の花が咲きみだれていて、とってもきれい。
そして広場をふちどる低い茂みは、ぜんぶキイチゴの木でした。
「すごーい!」
ナナはかん声をあげました。
赤い実はラズベリー。
黒い実はブラックベリー。
黄色っぽいのはモミジイチゴというそうです。
「じゃあナナちゃんは、ブラックベリーをカゴに集めてね! 黒くつやつやにじゅくした実をえらぶのよ」
「はぁい!」
言われたとおり、ナナは真っ黒にじゅくした実だけをさがします。
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【えらんでね】
木の実には1から9までの数字が書いてあります。
じゅくしておいしい木の実は、なん番かな?
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ココちゃんはラズベリーをつんでいきます。
ハムまるは、草の中をかけまわって花のにおいをかいでいますよ。
ナナのカゴはどんどん重くなりました。
(木の実を集めるって楽しい!)
このブラックベリーがおいしいジャムになるのですから、ナナはそれも楽しみです。
「はむむー!」
ナナのカゴがいっぱいになったころ、ハムまるが声をあげて高いところを指さしました。ナナはハムまるのところにかけよります。
「どうしたの?」
「はむっ!」
ハムまるが見ているのは、木になっている赤い実でした。つるんとしていて長細い形です。ココちゃんが教えてくれました。
「あ、あれはグミの実ね」
「グミ?」
お菓子じゃなくて、そういう名まえの木の実があるんだそうです。初めて知ったナナは、目をまん丸にしました。
「はむーん!」
ぴょん、とハムまるがナナのスカートに飛びつきました。そのまま肩へかけあがります。
「はむっ」
「え? グミの木に登りたいの?」
「はむは!」
おめめキラキラのハムまるにねだられて、ナナはグミの木にむかって手を伸ばしました。テケテケと、うでをハムまるが走っていきます。
枝に飛びうつって、ハムまるはキョロッとしました。実がなっているところを探しているのです。
「ナナちゃん、ハムまるが落とす実を受けとって!」
いきなりココちゃんに言われて、ナナはあわてました。カゴを地面に置き、ハムまるの下にかけつけます。
「はむん!」
「きゃっ」
ぽとり。
ハムまるはじょうずに軸をかみ切って、実を落としてくれました。ナナは両手で受けとめます。
「はむっ」
「はいっ」
「はむんっ」
「ほっ」
なんだかゲームみたい。おもしろくなってナナはきゃあきゃあ笑いました。
ところが。
「はむ……はむむぅーっ!」
ズルリとすべったハムまるそのものが枝から落ちてきました!
「ハムまる……っ!」
ナナは必死でキャッチ!
なんとか助けたけど――。
「あれれ」
「はむぅ……」
ハムまるにグミの実がちょっとつぶされちゃいました!
茶色の背中と白いおなかが、赤い汁でそまっています。
なさけない顔になったハムまるだけど、自分をペロリとなめたらおいしかったみたいですよ。ナナの手の上なのに、むちゅうで毛づくろいをはじめました。
「ふふ。あははは!」
なんだかとっても楽しくなって、ナナは大きな声で笑いました。
ナナもなんだか元気が出たみたいです。

