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「それじゃあ、キイチゴつみにしゅっぱーつ!」
ココちゃんにおねがいされたお手伝いとは、キイチゴをつみに森へ行くことでした。ナナはドキドキしながらココちゃんとならんで歩き出します。
レンガの家と庭が森の中みたいだと思ったのは半分本当で、森は庭のすぐ近くまでせまっていました。
ナナがわたされた小さなカゴは、ラタンを編んだかわいい物でした。これにキイチゴを収かくするのです。
(それって、あの「〇〇〇〇パフェ」に使うのかな?)
ここに来るときにタップしたタイトルを思い出しました。
「――そうなの!」
きいてみると、ココちゃんは大きくうなずきました。じつは材料になるキイチゴが足りなくて動画が作れていないそうなのです。
あの〈ひみつのお庭〉にもキイチゴがなる木はあります。でも、ハムまるが遊びながらつまみ食いしていたら足りなくなっちゃったらしいですよ。
「せっかくジャムにするなら、たくさん作りたいものね」
「はむむーん」
ココちゃんの肩の上のハムまるは、食いしんぼをバラされてショボンとします。ナナはそうっと頭をなでてあげました。
「そんなにおいしかったんだねえ。じゃあたくさん森で集めよう。わたしもお手伝いするからだいじょうぶ!」
「はむん!」
ハムまるが元気に返事します。キリッと気合いを入れて前をむきました。やる気まんまんです!
そこはもう森の入り口でした。
明るい木立ちのあいだを小道が曲がりくねってつづいています。
ナナとココちゃんは、軽い足どりで森に入っていきました。
「森のキイチゴも、とってもおいしいのよ」
「わあ楽しみ! だけど、お庭でも育ててるのはどうして? キイチゴがなっているところって遠いの?」
ナナはちょっと心配になりました。時間がかかるとしたら、家に帰るのがおそくなっちゃいます。
ココちゃんは首をふって、はずかしそうにしました。
「遠くはないわ。でもね……わたし、迷子になっちゃうから。ナナちゃん、道をおぼえておいてくれるとうれしいなぁ」
「え?」
(というと……まさかココちゃんは方向おんちってこと?)
「ええーっ」
「ああーん、カッコ悪いからないしょにしてね?」
「ぜんぜん! カッコ悪くなんかない、むしろかわいいよ!」
ナナは心から言いました。
料理が作れて、ラップがじょうずで、おどれて明るいココちゃん。
だけどそんな一面があるなんて!
「そこ、ギャップ萌えポイントだから!」
「そ、そうかな? ありがとう、ナナちゃんやさしいね!」
やさしい。
ほめてもらったのに、ナナはちょっとかなしくなりました。
(だってわたし……学校でぜんぜんやさしくできなかったもん)
今日は、ナナのしっぱいのせいで友だちにめいわくをかけた――かもしれないのです。なのに「ごめんなさい」を言えていませんでした。
モヤモヤしながら帰ってきたので、「チクタクック!」を見ていてもひとり言が多くなりました。元気を出したかったのです。
(――まさかチャンネルの中に入っちゃうなんて思わなかったけど!)
ナナのとなりにココちゃんがいるって……そういうことですよね?
ここは「チクタクック!」チャンネルの世界。
ふしぎなふしぎな「ひみつのお庭」なのです。
「……ねえナナちゃん、何かこまってるの?」
ナナがだまってしまったら、ココちゃんは心配そうにしてくれました。あわててブンブン首をふります。
「へーきへーき! 元気だよ?」
わざとおどけてみせて、ナナは森を歩いていきます。
でもナナのカラ元気はしっかり伝わってしまったみたいです。ココちゃんとハムまるは顔を見合わせました。
「それじゃあ、キイチゴつみにしゅっぱーつ!」
ココちゃんにおねがいされたお手伝いとは、キイチゴをつみに森へ行くことでした。ナナはドキドキしながらココちゃんとならんで歩き出します。
レンガの家と庭が森の中みたいだと思ったのは半分本当で、森は庭のすぐ近くまでせまっていました。
ナナがわたされた小さなカゴは、ラタンを編んだかわいい物でした。これにキイチゴを収かくするのです。
(それって、あの「〇〇〇〇パフェ」に使うのかな?)
ここに来るときにタップしたタイトルを思い出しました。
「――そうなの!」
きいてみると、ココちゃんは大きくうなずきました。じつは材料になるキイチゴが足りなくて動画が作れていないそうなのです。
あの〈ひみつのお庭〉にもキイチゴがなる木はあります。でも、ハムまるが遊びながらつまみ食いしていたら足りなくなっちゃったらしいですよ。
「せっかくジャムにするなら、たくさん作りたいものね」
「はむむーん」
ココちゃんの肩の上のハムまるは、食いしんぼをバラされてショボンとします。ナナはそうっと頭をなでてあげました。
「そんなにおいしかったんだねえ。じゃあたくさん森で集めよう。わたしもお手伝いするからだいじょうぶ!」
「はむん!」
ハムまるが元気に返事します。キリッと気合いを入れて前をむきました。やる気まんまんです!
そこはもう森の入り口でした。
明るい木立ちのあいだを小道が曲がりくねってつづいています。
ナナとココちゃんは、軽い足どりで森に入っていきました。
「森のキイチゴも、とってもおいしいのよ」
「わあ楽しみ! だけど、お庭でも育ててるのはどうして? キイチゴがなっているところって遠いの?」
ナナはちょっと心配になりました。時間がかかるとしたら、家に帰るのがおそくなっちゃいます。
ココちゃんは首をふって、はずかしそうにしました。
「遠くはないわ。でもね……わたし、迷子になっちゃうから。ナナちゃん、道をおぼえておいてくれるとうれしいなぁ」
「え?」
(というと……まさかココちゃんは方向おんちってこと?)
「ええーっ」
「ああーん、カッコ悪いからないしょにしてね?」
「ぜんぜん! カッコ悪くなんかない、むしろかわいいよ!」
ナナは心から言いました。
料理が作れて、ラップがじょうずで、おどれて明るいココちゃん。
だけどそんな一面があるなんて!
「そこ、ギャップ萌えポイントだから!」
「そ、そうかな? ありがとう、ナナちゃんやさしいね!」
やさしい。
ほめてもらったのに、ナナはちょっとかなしくなりました。
(だってわたし……学校でぜんぜんやさしくできなかったもん)
今日は、ナナのしっぱいのせいで友だちにめいわくをかけた――かもしれないのです。なのに「ごめんなさい」を言えていませんでした。
モヤモヤしながら帰ってきたので、「チクタクック!」を見ていてもひとり言が多くなりました。元気を出したかったのです。
(――まさかチャンネルの中に入っちゃうなんて思わなかったけど!)
ナナのとなりにココちゃんがいるって……そういうことですよね?
ここは「チクタクック!」チャンネルの世界。
ふしぎなふしぎな「ひみつのお庭」なのです。
「……ねえナナちゃん、何かこまってるの?」
ナナがだまってしまったら、ココちゃんは心配そうにしてくれました。あわててブンブン首をふります。
「へーきへーき! 元気だよ?」
わざとおどけてみせて、ナナは森を歩いていきます。
でもナナのカラ元気はしっかり伝わってしまったみたいです。ココちゃんとハムまるは顔を見合わせました。

