ナナとひみつの Tic Tac cook!


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 いちど学校から帰って、ミミちゃんはあらためてナナの家まで来てくれました。といっても、ご近所さんなんですけどね。

「今日はねえ、ココちゃんふうのティラミスを作ろうかなって」
「あ、それわたしも見た!」
 ナナが材料を取り出すと、ミミちゃんは大よろこびしてくれました。じつはミミちゃんも「チクタクック!」を見ているんです。

(ミミちゃん……信じてくれるかな。ココちゃんとハムまるに会ったんだよって言ったら)
 ナナは〈ひみつのお庭〉のことを言ってみたくてウズウズしました。
(でも……)
 ガマンです!
 だって〈ひみつ〉なんですよ?
 ココちゃんは「お友だちに教えてもいい」なんて言いませんでした。だったら〈ひみつのお庭〉は〈ひみつ〉のままでなきゃね!

「ナナちゃん、これ自分でそろえたの? すごーい!」
「ううん、お母さんに手伝ってもらった」
 テーブルに並べた材料だけで、二人はうれしくなりました。
 でもおしまいに出したキイチゴには――ミミちゃんが首をかしげます。
「これ、なあに?」
「えへへ、ないしょ! お楽しみだよ!」
 キイチゴは、ティラミスの回には出てきませんでした。これはナナとココちゃんだけのアレンジレシピなんです。


 ――さあ、「チクタクック!」ナナ&ミミちゃんバージョンのはじまりです。
 ココちゃんの動画を思い出しながら、二人でがんばりますよ!


 クッキーはビニール袋に入れて、すこしくだきます。
 インスタントコーヒーは、すくなめのお湯でとかしておきます。
 ヨーグルトはふきんで包み、ひとばん水を切ってありました。水がぬけポテポテになったヨーグルトにさとうを加え、なめらかにまぜます。


「うわあ、けっこうたいへんなのね。動画みたいにパパパッていかないんだ」
 ミミちゃんが言いました。そんな下ごしらえが大切なんだと、もうナナにはわかっています。
 でも、こうして準備ができました。
 もうガラスのコップにもりつけるだけです!

 動画のはじまりみたいにナナはリズムにのって言いました。
「よぉーしミミちゃん、おねがい!」
「え、わたしハムまる役?」
 二人でいっしょに笑いました。
 ウソですよ、並べた材料を半分こして、それぞれ自分のティラミスを作るんです!
 それじゃあ、やっていきましょう!


「くだいたクッキー!」
「半分こ!」

「インスタントコーヒー、濃いめ!」
「……クッキーにかけて、まぜるの?」
「うん、たぶんそう」

「ええと、水切りヨーグルトとさとう!」
「あ、もうまぜてあった!」

「あとは、かさねて……」
「はむはむーん!」
「ミミちゃん、いきなりハムまるにもどるし!」

 ツッコミながら、ナナはじっくりゆっくり材料を重ねます。ミミちゃんのぶんもできあがると、二人はせーの、で言いました。
「ココアパウダーで仕上げだよ!」
 茶こしでフワフワとココアをふりかけ、完成! ――っと、
「まってミミちゃん。はい、これも」

 いちばん上にかざるのは、ブラックベリー、ラズベリー、モミジイチゴの三色キイチゴ!
 ココちゃんとハムまるとの、思い出のおみやげです。思い出だから――ミミちゃんにも食べてもらいたいとナナは考えたのです。
 ひとりじめより、わけっこする方がおいしいに決まっていますよね!

「うわあ、かわいい!」
 ミミちゃんは目をキラキラさせ、よろこんでくれました。ナナは大まんぞくです。


 あいた器をキッチンにさげ、テーブルをきれいにしたら――いよいよ、いただきます!
「――うん、おいしい!」
「トロトロでサクサクなの大好き!」
 二人はむちゅうで食べました。自分たちで作ったデザートって、なんておいしいんでしょう。
 ナナはとっても幸せで、だから考えてしまいました。
(……今のわたし、ぜったい〈ひみつのお庭〉には行けないよね)

 ココちゃんは言ったのです。「ここにはね、何かをなやんでいる子が来るの」って。
 今のナナには、なやみなんてありません。ココちゃんのおかげでミミちゃんとしっかりお話できたのですから。

(ううん、お庭に行かなくていいんだ。ココちゃんに心配かけたくないもん)
 ココちゃんにも、ハムまるにも、「チクタクック!」チャンネルを見れば会えますよね。だったらそれでじゅうぶんです。
 ココちゃんがつんだラズベリーを、ナナはさいごに食べました。甘くてすっぱくて、とってもいい香りがしましたよ!




 ――でも。
 もしかしたら、次はあなたが〈ひみつのお庭〉へ行くのかもしれません。
 だってココちゃん、言いましたから。

「困った時には来てね。〈Tic Tac cook(チクタクック)のひみつのお庭〉へ」

   ――――って!



 ☆ おしまい ☆