窓の外の、夕方の光。
おどろくナナに、ココちゃんは言いました。
「――ナナちゃん、おうちに帰る? 帰りたければ、帰れるのよ?」
ココちゃんはとってもやさしい顔です。
そして、とってもふしぎな顔でした。
もしかしたらココちゃんて、魔法使いなのでしょうか?
「……わたし、帰れるの?」
「もちろんよ。たくさんお手伝いさせてごめんね。ここからは自分でやるからだいじょうぶ! そうだわ、森ではハムまるのことも助けてもらったんだった! 本当にありがとう」
すごく楽しかったのはナナの方なのに、ココちゃんはあやまってくれます。
ナナはハッとして、決心しました。
(――あした学校に行ったら、ミミちゃんにあやまろう)
ココちゃんが言ってくれた「ごめんね」も「ありがとう」も、すごくやさしく聞こえました。
悪いことなんかココちゃんは何ひとつしていません。
でもナナのことを思って言った、「ごめんね」。
「ごめん」はだれかを思いやる言葉でもあったんだとナナは初めて気がつきました。
(そういうのってすごいな。すてきだな)
ナナは、ますますココちゃんのファンになりました!
もっとココちゃんと仲よしになりたい気はするけれど、心配かけちゃいけません。
ココちゃんに負けないぐらいの笑顔でナナは言いました。
「ココちゃん、わたし家に帰るね! すごく楽しかった、ありがとう!」
「――よかった、ナナちゃん元気になったみたい」
ココちゃんはニッコリします。
「ここにはね、何かをなやんでいる子が来るの。元気が出たならもう帰れるよ! じゃあ、ハムまる?」
「はむーん!」
ココちゃんがふり向くと、ハムまるが小さなとうめいの袋を引っぱってきます。
リボンでとめられた袋の中には、三色のキイチゴがちょっとずつ入っていました。
「お手伝いのお礼にどうぞ! デザートの上にかざってもかわいいわよ?」
わたされたキイチゴをみつめてナナは思いつきました。
「……ティラミスにも合う?」
「もちろん! 仕上げにちょこん、て置いてみましょ!」
そうぞうしてナナは笑顔になりました。
それ、ぜったいかわいいはずです!
「ありがとうココちゃん。今日はとっても楽しかった。おみやげまでもらって本当にうれしい! わたし、ずうっと〈チクタクック!〉のファンだから!」
「うふふ、ありがとうナナちゃん」
ココちゃんはきゅっ、とナナをだきしめてくれました。
「困った時にはまた来てね。〈チクタクックのひみつのお庭〉へ!」

