森の運び屋 花園急便─運んだ荷物は毒リンゴ─

 馬車の窓から見える景色が、森から街へ変わっていく。私は懐かしい故郷の街並みに目を潤ませた。ようやく帰って来ることができた。全部、花園急便──シュナイデルさんのおかげだ。

「私も寂しいですよ。花園急便さん……」

 あのまま小人の家で暮らせたらいいなと思っていた。毎日賑やかで、花園急便さんが会いに来てくれる……楽しくて、暖かくて、幸せだった。

「マリー様、お元気で。」
「シュナイデルさん……私……」

 会えなくなる前に自分の思いを伝えたかった。でも、どうしても言葉にならなかった。

「大丈夫ですよ。すぐに会えます。」
「本当ですか?私の国へ来た時は、必ず訪ねてくださいね?」
「えぇ、必ず。」

 シュナイデルさんは森の運び屋『花園急便』。きっといろんな国をまわっているのだろう。

「すぐに会える。」

 そう言ってくれたけど、約束をしたわけではない。私の心は寂しさでいっぱいだった。