森の運び屋 花園急便─運んだ荷物は毒リンゴ─

　マリー様が帰国する前の最後の晩餐。小人たちは号泣していた。

「そんなに泣かないで。隣の国よ？それに、この森は繋がっているわ。」
「マリー様が男だったら、こんなに泣いてないんだろうな〜」

「うるさいぞ、花園急便！」
「そうだ、そうだ！」

「花園急便さんは寂しくないんですか〜？」
「そうですよ。どうなんです？」

「え、俺？俺は……」

　マリー様の方へ視線を向けると、マリー様は大きな瞳をこちらへ向けていた。

「寂しいですよ。そりゃ……」

「ひゅ〜！」
「いいぞ！花園急便！」

「うるさいなぁ。」

　毒リンゴを運んでしまった後、俺は何度もこの家に足を運んだ。荷物の依頼があってもなくても。それはマリー様の体調が気になったから……ということにしていたけど、多分違う。ただ、会いたかっただけだ。

　その翌日。マリー様は帰国の途についた。馬車は、かぼちゃとねずみをあの魔法使いに変えてもらった。マリー様が乗った馬車が見えなくなると、小人たちが近づいてきた。

「これからどうするのです？」
「帰るよ。花園急便はおしまいだ。」

　すると、風に乗って一枚の紙切れが飛んできた。ひらりと足元に落ちたその紙は、王子の行方を探しているという内容のチラシ。

「もう行方不明ではなくなりますね。」
「王子殿下のご帰還っ！」
「大袈裟な。」
「さぁ、参りましょう。シュナイデル様！」
「我々がお送りいたしますっ！」

　俺は、衛兵の真似をして歩く小人たちを見て笑った。