森の運び屋 花園急便─運んだ荷物は毒リンゴ─

　森のはずれにある古い洋館に住む女が、マリー様の母親を殺した犯人──魔女に違いない。

　そう確信した俺は、かつて荷物を届けた魔法使いのもとを訪ねた。

「こんにちは。花園急便です。」
「あら、今日は何も頼んでいないわよ？」
「今日は、相談があって参りました。」

　魔法使いは、俺が持っているリンゴを見て、言いたいことを察したようだ。

「魔女を倒したいと言うのね？」
「はい。放っておくわけにはいきません。」

　俺が花園急便として森の運び屋をやっているのは、魔女を見つけるためだった。毒が塗られた食べ物に、恍惚とした表情で口をつけ、命を落とす──そんな事件が相次いでいた。

「早くしなければ、新たな被害が出てしまいます。」

　マリー様が生きているとわかったら、魔女は再びマリー様を狙うはずだ。

「魔女退治はそう簡単にはいかない。何せ相手は魔女だ。」
「倒す方法はないのですか？」

　魔法によって簡単に退治することができると思ったが、そう簡単にはいかないらしい。ならば、自分の手で倒すしかない。

「わかりました……ありがとうございました。」

　茶色い箱を持って帰ろうとすると、魔法使いに引き止められた。

「ちょっとお待ちよ。確実な方法はない。だけど、魔女にも弱点がある。魔女の家には鏡があるはずだ。」
「ありました。一瞬だけ老婆の姿が映ったような……」
「それが、魔女の正体さ。」
「あれが……？」

「魔女は美しさこそ全て。『世界で一番美しいのは誰か』と問いかけ、鏡が映し出した人間を殺しているのさ。」
「だからマリー様を……」

「魔法の鏡は真実を教えてくれる。美しいものも、醜いものもね。」
「わかりました。感謝いたします。」
　
　俺は腰に剣を差し、リンゴの入った茶色い箱を抱えて、森のはずれにある古い洋館へ向かった。