籠の中の鳥

 俺は監禁されている。でも紗里奈がいちいち気にかけるから、こんな生活にも慣れてしまった。

 紗里奈の機嫌が良い時は、鼻歌を歌っても、ぶつぶつ独り言を言っても、にこにこしながら俺を見るだけ。

 でも機嫌が悪い時は、嫌味を言われたり、大きな声を出されたりする。

「うるさいなー!静かにしてよ!」

 これは、紗里奈が何かしている時によく言われる。

「もう、黙ってよ!」

 これは、俺が調子に乗って歌っている時によく言われる。

「静かにしなさーい!」

 これは、俺が暇すぎて運動している時によく言われる。でもこの時の紗里奈は、そんなに怒っていない。顔は笑っているから。

 紗里奈の存在はどんどん大きくなっている。でも俺は気づいていなかった。