じりじりと暑い日差しが攻めてくる夏の昼間。保険会社に勤めている私は営業のため、実家の近くに住んでいて小さい頃にお世話になっていた秋山さんの家を訪問した。

今日辺り契約してくれるかな？と思っていたのに。
　
「遥（はるか）ちゃん、何回も来てくれて沢山説明してくれたのにごめんね。夏樹くんの方でさっき契約させてもらったわ」
「そうだったんですね！　色々話をきいてくださりありがとうございました。また何かありましたらよろしくお願いします」

「またいつでも遊びにきてちょうだいね」
「はい、本当にありがとうございました。では、最近は暑いので、お身体に気をつけてくださいね」
「遥ちゃんも気をつけてね！」

　最高の笑顔を作ってお辞儀をし、外に出た。車に乗り込むと顔を歪ませながら、はぁっと深いため息をついた。

　今秋山さんの口から出てきた男の名は〝神田夏樹〟。二十九歳の私よりも二歳下の幼なじみだ。今はそれぞれ別々の場所に住んでいるけれども、それまでは家がとても近くて、小さい頃はよく遊んでいた。疎遠になっていた時期もあった。けれど別の会社だけど夏樹も保険会社に勤めたのをきっかけに再び交流することに。

「夏樹めっ！」と、言葉を吐き出しながらエアコンの風を顔に当たるようにして強くした。髪が乱れるほど強くしすぎたから弱めると髪の毛を手ぐしで整えた。