ミシュリーヌはクロエの名前を呼ぶ。
その瞬間、周囲の空気が固くなったような気がした。
けれどミシュリーヌだけは、何故か納得するように頷いているではないか。

(クロエ嬢はミシュリーヌ嬢を俺から守りたいのだろう)

クロエがミシュリーヌが大好きなのだとよくわかっていた。
ミシュリーヌもそれがわかっているという頷きだろうか。


「俺はミシュリーヌ嬢が大丈夫ならば構わない」

「ありがとうございます。よかったわね、クロエ」

「えぇ、ミシュリーヌお姉様と一緒にいられることができて嬉しいわ」


『ミシュリーヌお姉様』と言う言葉がかなり強調されていたようだが、ここはスルーしていいだろう。
シューマノン子爵たちもエーワンもそれには青ざめている。
ミシュリーヌと玄関に向かった。
どうやら乗ってきた馬も手入れをしてくようだ。


「レダー公爵、ありがとうございます」

「いや……こちらこそありがとう、ミシュリーヌ嬢」


オレリアンはミシュリーヌの優しい笑みを見て、再び無意識に微笑んでいた。


「あ、そうだわ! 少々お待ちください」