推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

第三騎士団で働くミシュリーヌの兄、エーワンも騎士団の仕事でくたくたになって帰ってくる。
身近で大変なことを知っているからこそ、ミシュリーヌはオレリアンの大変さが少しは理解できる。
よく見ないとわからないが、吐く息は荒い。
この状態で買い物に付き合わせることなど出来はしない。

(体調を崩しているのに手紙を届けにここまできてくださったのは嬉しいけど……それに明日は休みだと言っていたから、休むのが先よね! 健康第一だわ)

ここでミシュリーヌはあることを思いつく。


「いいえ、大丈夫です」

「……!」


ミシュリーヌが首を横に振るとオレリアンは大きく目を見開いた。
その顔はショックを受けているようにも見える。
ミシュリーヌはオレリアンに言い聞かせるように話していく。


「レダー公爵、わたしのことよりも体をゆっくり休めてください」

「…………は?」

「休むのが先です!」


オレリアンはまさかこんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
ミシュリーヌを見つめながら固まってしまった。

(健康はどんなものにも変えられない。何よりも大切なものだもの)

けれど前世は病に冒されて、自由に強く憧れているからこそそう強く思うのかもしれない。
健康で美味しくご飯が食べられることや、自分のやりたい時にやりたいことができるのか。
当たり前のことだけど、当たり前じゃない。
それがどれだけ大切で尊いことなのかが、ミシュリーヌはよく知っている。
だからこそオレリアンにはゆっくりと体を休めて欲しいと思った。