「……ここ、もう天井が落ちかけてる!早く搬送を!」

誰かが怒鳴る。

「相原!こっちお願い!」

その声に応えて走ってきた数人のレスキュー隊。

酸素ボンベ、ヘルメット、顔には煤(すす)。

一瞬、視線が交差した。

けれど言葉は交わさない。

お互い、どこかで見たことがある。

そんな、“既視感”だけが静かに胸を叩いた。

でもすぐに視線を戻し、処置を続ける。

男も、私の顔を追うことはしない。

ただ、現場の指示を淡々とこなしていく。

だけど。

少し離れた場所で、ふたりは同時に、心の中で思っていた。