悠瑚の葬儀の後、紫苑と大弥はしばらく言葉を交わすことができなかった。

しかし、一ヶ月が過ぎた頃、大弥が紫苑を呼び出した。

「兄貴の夢、覚えてる?」大弥は桜の木の下で尋ねた。

「家族を養えるくらいのお金持ちになること」紫苑は答えた。

「俺、その夢を引き継ぐことにした」大弥は空を見上げた。「正社員の内定をもらったんだ。小さな会社だけど、頑張って昇進して、家族を楽にしてやりたい」

「悠瑚が喜ぶわ」紫苑は微笑んだ。

「君は?医学部、大変でしょう?」

「ええ、でも頑張る。悠瑚との約束だから」紫苑は医学書を抱えていた。「いつか、悠瑚のような病気で苦しんでいる人を救いたい」

二人は無言で桜の木を見上げた。そこには、悠瑚の笑顔が重なって見えた。