六年が過ぎた。紫苑は医師国家試験に合格し、血液内科医として歩み始めた。

大弥は約束通り、昇進を重ね、家族を支えられるようになっていた。さらに、ボランティア活動にも参加し、病気の子どもたちを支援していた。

春のある日、二人は悠瑚の墓前に報告に訪れた。

「悠瑚、私、医師になったよ」紫苑は白衣姿で墓石に語りかけた。「今日、初めて白血病の患者さんを担当することになったの。その人を、絶対に治してみせる」

「兄貴、俺も課長になったぞ」大弥は胸を張った。「家族みんな、元気にやってる。母さんも、兄貴のことを誇りに思ってるって言ってたよ」

風が吹き、桜の花びらが二人の周りを舞った。

「悠瑚がいてくれたから、今の私たちがある」紫苑は涙を流した。

「兄貴、見てるかな?俺たち、ちゃんと約束を守ってるぞ」大弥も目を潤ませた。

その時、暖かい風が二人を包んだ。まるで悠瑚が「ありがとう」と言っているかのように。