ロールキャベツ男子って、そういう意味じゃないと思います。

 私の人生は、レオ様に身を捧げて終わるはずだった。だけど、目を開けたらいつもと同じ部屋にいた。

(夢だったのかな……)

 恐る恐る首筋に触れると、大きな絆創膏が貼ってある。夢じゃない。昨夜、私はレオ様に──

 すると部屋の扉がゆっくり開いた。

「リゼル?」
「レオ様……」

 重い体をなんとか起こすと、エプロン姿のレオ様が駆け寄ってきた。

「まだ寝てないとだめだよ。辛いでしょ?」
「レオ様、それは……?」

「元気になって欲しくて作ったんだけど、なんか上手くいかなくて……」

 レオ様が運んできたワゴンの上にはロールキャベツ……みたいな崩れた肉とキャベツの塊が乗っていた。

「ごめん、リゼル。満月になる前に出て行ってもらわなきゃいけなかった……やりたいこと、何かないの?」

 レオ様の瞳は、昨夜とは違う深い海のような青い色をしている。私はようやく、レオ様が私にやりたいことを聞いてくれた理由を知った。

(満月の前に、私をここから出すためだったんだ。)

 心の中にじんわりと暖かさが広がっていく。そして、私はレオ様の青い瞳を見つめた。

「見つけましたよ。やりたいこと。」
「なに?やっぱり先生になりたい?編み物なら……ここでもできると思うんだけど……」

 レオ様は無自覚に私の袖を掴んでいる。こんなに寂しそうな顔をされたら、出て行くことなんてできない。

「レオ様のために、ロールキャベツを作ること──それが、私のやりたいことです。私の方が上手く作れると思いますから。」
「これは初めて作ったからで……食べれば一緒だし……」

「そうですね。とても美味しそうですよ?」
「頑張って作ったけど、俺はリゼルのロールキャベツの方がいい。また作ってくれる?」
「はい。もちろんです!」

「じゃあ、すぐに出て行ったりはしないよね?」
「そうですね。他にやりたいことが見つかるまでは、ここにいます。」
「よかった……」

 レオ様は私の手をぎゅっと握りしめた。

 テーブルの上には、何冊か本が積み上げられている。その中に『鉄分豊富な元気の出るレシピ』という本が見えて、笑ってしまった。

「レオ様は、どうしてロールキャベツが好きなのですか?」
「初めて食べた時に、ちょっと落ち着いたんだ。それからは、ずっとロールキャベツにしてる。」

 ロールキャベツで衝動を抑えているのだろうか。だとしたら、本来は満月の日以外にもあんな風に──?

 私は昨夜のレオ様の姿を思い出した。怖くないと言えば嘘になる。でも、赤い瞳のレオ様はすごく綺麗だった。