Can I sit next you?

日本の花火大会はもちろんイギリスのものとは違った。並んでいる屋台一つ一つが気になり、桜に色々教えてもらった。初めてたこ焼きやりんご飴を食べた。

「桜、浴衣すごく綺麗だったよ」

アイザックがあの夜、口にできなかった言葉を言った。すると桜は顔を俯かせる。不快にさせてしまったか、と不安になったアイザックだったが、彼女の耳が真っ赤に染まっているのを見て少し安心した。

バスが学校に着くまでの間、アイザックと桜は三年間の思い出話をした。話をすればするほど心の中に楽しかった気持ちが蘇る。それと同時に、もう今日で高校を卒業してしまう寂しさも溢れてくる。

体育祭で一緒に踊ったこと、文化祭で劇をしたこと、修学旅行で北海道へ行ったこと、テスト前は図書室で勉強したこと、茶道部に所属していた桜が抹茶を淹れてくれたこと、アイザックがそのお礼に紅茶を淹れたこと。話は尽きない。

(でも、今話さなきゃいけないのは思い出話じゃない)

バスが学校に近付いている。アイザックの胸の鼓動が高鳴っていくのを感じた。桜がそばにいる「当たり前」がもうすぐ終わってしまう。