音のない世界で私の耳になってくれた君は





付き添いで救急車に乗った俺はじっと蛍を見つめた。



苦しそうな吐息、表情…


よほど辛かったのだろう。




蛍の苦しみは俺なんかにわかりっこない。

聞きたいのに聴けない。



聞こえるのはノイズ音だけ…



一度も聞いたことがない人生はどんなに辛いのだろう?





「すみません、手話できますか?」


「あ…はい。普通にできます…」


「よかった!先程搬送先の病院に問い合わせたところ手話通訳士はもちろん、手話ができる人すらいないらしく…」



そりゃあ、まぁ…




世の中に手話ができる人なんてほんの少ししかいない。



どうしてだ?

ろう者でも会話する権利がある。



なぜ手話はこうも広がっていない?


そもそも手話がもっと広まっていれば今回だってこんなことにはならなかったはずだ…


なぜだ?




俺は障害者と健全者を差別し始めた奴らを…









一生許さない…