「結城(ゆうき)さん、お久しぶり」

「お久しぶり。初果(ういか)さん」

彼女達は横断歩道を小走りに渡り私を挟んでピタリと足を止めた。

「お二人とも帰国されたんですね」

旧姓呼びをされて私も迎え撃つべく彼女達との身長差を隠すため堂々と胸を張る。

圧がヤバすぎる。
誰がどう見ても二人は美しい!
認めます!

「昨日、一時的にね」

「あら偶然…帰ってこなくて良いのに」

ちょっと高梨さん!
一言多い!多すぎる!

「おほほほっ」
「ふふふっ」
「ははは…」

微笑んで髪を掻き上げる2人の姿に通り過ぎる人達は皆んな振り返る。

私は視界にすら入ってない。
そうなるよね。
彼女達は自信に満ち溢れてる!

お勉強と言う留学を終えて帰国した彼女達はレベルアップを評価されて昇進は確定してる。

「お二人ともお疲れ様でした」

「ところで、あの件なんだけどいつ出来る?」

「そうそう、いつ?」

あの件=離婚!
離婚にいつってあるー?
戸籍だけの本妻が偉そうなこと言えません。

まぁ、彼女達は側室からの本妻に成り上がりたいわけだし急いで離婚して欲しいとは思うんだけどさ…。

「もしかして七織のこと好きになったとか?」

川崎さんの真顔怖ッ!

「そうなの?飼い犬に手を嚙まれるってこのことね」

高梨さんの疑いの目も怖ッ!

旦那さんを好きになった…?
それはこの二人とバトルを意味する。

「そんな、恐れ多いです…」

「そうよね」

「初果さんで良かったわぁ~」

二人は満足気な笑顔を浮かべ私はその光景に心の中でチッと舌打ちしてべーッと舌を出した。
そして良くない頭をフル回転させ彼女達の満足する答えを導き出す。

「一応、3ヵ月を目途にするのはどうですか?期限前に離婚を切り出すと変に勘繰られると思うんで」

お金を貰った立場で顏にも態度にも出すわけには行かず笑って誤魔化す。

「じゃあ、期限までの3ヶ月でお願いね」

呪いのビデオのドラマだと1週間だけど彼女達は3ヵ月もくれるらしい。

彼女達とのこの話は旦那には秘密。
多額の結納金を出したのは旦那だけどこっそり渡された手切れ金は彼女達から。

「出て行く日は追って連絡します」

女の執着って怖い。
仕事も旦那も一流が良い人達。
顏に似合わない貪欲さは同じ女性として尊敬すら出来る。

「家を探しながら…まずは離婚に向けての策を…」

上手く出来るか分からないけど彼女達の去ってく背中に再度べーッと舌を出して二人を取り巻く社員達には憐(あわれ)みの視線を向けいつもの職場に向かった。

普通に恋がしたい!
普通に家族が欲しい!
それが私の願い。

「いくら私がね…」

旦那に恋したところでは叶わない。
旦那いや天水家が望んでるのは彼女達なんだから。
だったら新しい恋を見つけたい!

離婚出来たら晴れて私の恋の解禁です!