「それに最大級の既成事実(妊娠)を作ったのは七織じゃない?謝るのはあんた!」
「何でおれが。そんな明け透けな言い方やめろよ」
凄く困った表情を浮かべて彼は額に手をやった。
「好きで好きで好き過ぎて冷蔵庫のゼリーも七織が入れてたくせに!拗らせ男!」
「そこまで言うか普通。俺、社長だぞ?」
「ふーん、解雇にでもするー?この私を」
スイーツでは七織さんも川崎さんに一目置いてる存在だし…七織さんの負けだな。
(…面白い二人)
ハブとマングース。
龍と虎。
バチバチの青い炎の再来!
私は関係無さそうだから少し黙って見てるのも面白そう。
「はいはい!まずはご飯にして後で好きなだけやって」
環希さんと恵美が大皿で持って来た大量のかき揚げを前に皆んなで大人しく「頂きます」と手を併せた。
◇
「本当にどうしたら良いのか…」
川崎さんのようにすんなり話が済むなら私も七織さんも苦労はしない。
これから立ちはだかる山は世界最高峰のエベレストよりも高くマリアナ海溝より深い。
「どうしたもんかね~」
久しぶりに会った小田原課長も困った顏でお茶をすする。
「取り合っても貰えないんです」
私は下を向いて生唾を飲み込んだ。
いくら旦那が話をしても会長である義父が説得しても一時は契約婚を許した義母は正式な結婚と妊娠に納得しない。
それどころか高梨さんとの再婚をまだ諦めてないようで皆んなで困り果ててる。
「私が話を出来れば思うんですけど」
「それで今日か。でもいつ産まれてもおかしくないよね…七織くんには」
「話してないです」
創立記念式典で今日は義母も出席することは知ってる。
会場に行くと目立つから何とか社内で捕まえたいと思って課長に連絡を取りここまで来た。
「お腹は大丈夫?遠くから一人で来るなんて何があるかも分からないのに」
無謀なのは承知!
でも産まれて来る子供は皆んなに祝福されて欲しい。
その一心でここまで来た。
「一緒に行こうか?」課長の申し出を丁寧に断り資料室を後にしてエレベーターに乗り込んだ。
恵美からの事前情報だと会場に向かう前に会長室に来て一緒に会長とホテルに向かうらしい。
そうなると絶対上層部専用のエレベーターを使うことになる。
「ここで待とう」
上層部エレベーター近くの柱に寄りかかる。
お腹は少し張ってる気もするけど近くに産婦人科があるのも知ってるし救急病院だって近くにある。
「一緒に分かって貰おうね」お腹を撫でてエレベーターが開くのを待ちわびた。
そろそろかな…?
30分近く立ったままはさすがにきつくてロビーのソファに座ったり少し歩いたりと工夫してる。
上層部用のエレベーターの回数が淡く光って降りて来てるのが分かり少し近寄った。
旦那の可能性はない。
自宅マンションから直接向かうことは確認済み。
ゆっくりと扉が開いたのと高梨さんが先に降りて来たのを合図に私は彼女達の方へ歩き出した。
「あなた…こんな所まで」
怪訝そうな義母の顏と微妙な顏の高梨さんが私の前で歩きを止めた。
「どうしても話を聞いて頂きたく失礼を承知で参りました」
手が震える。
頭を下げた状態で様子は分からない。
「そんな身体でどうしようもないわね」
冷ややかな声にゾクりとして一歩下がると小さな段に足を取られて座り込んでしまった。
「だいたい、あなたねー」
さっきの冷ややかな声がもう一度頭上から聞こえるとお腹に微かな違和感を覚えた。
…まさか。
小さく聞こえた何かが弾ける音と液体が流れる感覚。
破水…!?
「無理するから…。高梨さん、急いで車を入口に」
「救急車の方が」
高梨さんのうろたえる声に義母は「まだ産まれないわ。早く車と七織に連絡」とピシャリと言い放った。
義母のお付きの人達が清潔なタオルを準備して義母が私を支えながら時計を確認する。
「何でおれが。そんな明け透けな言い方やめろよ」
凄く困った表情を浮かべて彼は額に手をやった。
「好きで好きで好き過ぎて冷蔵庫のゼリーも七織が入れてたくせに!拗らせ男!」
「そこまで言うか普通。俺、社長だぞ?」
「ふーん、解雇にでもするー?この私を」
スイーツでは七織さんも川崎さんに一目置いてる存在だし…七織さんの負けだな。
(…面白い二人)
ハブとマングース。
龍と虎。
バチバチの青い炎の再来!
私は関係無さそうだから少し黙って見てるのも面白そう。
「はいはい!まずはご飯にして後で好きなだけやって」
環希さんと恵美が大皿で持って来た大量のかき揚げを前に皆んなで大人しく「頂きます」と手を併せた。
◇
「本当にどうしたら良いのか…」
川崎さんのようにすんなり話が済むなら私も七織さんも苦労はしない。
これから立ちはだかる山は世界最高峰のエベレストよりも高くマリアナ海溝より深い。
「どうしたもんかね~」
久しぶりに会った小田原課長も困った顏でお茶をすする。
「取り合っても貰えないんです」
私は下を向いて生唾を飲み込んだ。
いくら旦那が話をしても会長である義父が説得しても一時は契約婚を許した義母は正式な結婚と妊娠に納得しない。
それどころか高梨さんとの再婚をまだ諦めてないようで皆んなで困り果ててる。
「私が話を出来れば思うんですけど」
「それで今日か。でもいつ産まれてもおかしくないよね…七織くんには」
「話してないです」
創立記念式典で今日は義母も出席することは知ってる。
会場に行くと目立つから何とか社内で捕まえたいと思って課長に連絡を取りここまで来た。
「お腹は大丈夫?遠くから一人で来るなんて何があるかも分からないのに」
無謀なのは承知!
でも産まれて来る子供は皆んなに祝福されて欲しい。
その一心でここまで来た。
「一緒に行こうか?」課長の申し出を丁寧に断り資料室を後にしてエレベーターに乗り込んだ。
恵美からの事前情報だと会場に向かう前に会長室に来て一緒に会長とホテルに向かうらしい。
そうなると絶対上層部専用のエレベーターを使うことになる。
「ここで待とう」
上層部エレベーター近くの柱に寄りかかる。
お腹は少し張ってる気もするけど近くに産婦人科があるのも知ってるし救急病院だって近くにある。
「一緒に分かって貰おうね」お腹を撫でてエレベーターが開くのを待ちわびた。
そろそろかな…?
30分近く立ったままはさすがにきつくてロビーのソファに座ったり少し歩いたりと工夫してる。
上層部用のエレベーターの回数が淡く光って降りて来てるのが分かり少し近寄った。
旦那の可能性はない。
自宅マンションから直接向かうことは確認済み。
ゆっくりと扉が開いたのと高梨さんが先に降りて来たのを合図に私は彼女達の方へ歩き出した。
「あなた…こんな所まで」
怪訝そうな義母の顏と微妙な顏の高梨さんが私の前で歩きを止めた。
「どうしても話を聞いて頂きたく失礼を承知で参りました」
手が震える。
頭を下げた状態で様子は分からない。
「そんな身体でどうしようもないわね」
冷ややかな声にゾクりとして一歩下がると小さな段に足を取られて座り込んでしまった。
「だいたい、あなたねー」
さっきの冷ややかな声がもう一度頭上から聞こえるとお腹に微かな違和感を覚えた。
…まさか。
小さく聞こえた何かが弾ける音と液体が流れる感覚。
破水…!?
「無理するから…。高梨さん、急いで車を入口に」
「救急車の方が」
高梨さんのうろたえる声に義母は「まだ産まれないわ。早く車と七織に連絡」とピシャリと言い放った。
義母のお付きの人達が清潔なタオルを準備して義母が私を支えながら時計を確認する。



