朝日がまだ山の麓に登っていた時間に僕はある場所へ向かっていた。
  山の中を先に進むと広々とした草原が広がる場所がある。
 そこには小さな色とりどりの花が咲き、その中の百合の香りがふわりと涼しい風と共になびいていた。
 初めて出会ったのはこの場所だった。
 二人とも五歳の時、彼女は一匹の綺麗な猫を肩に乗せたまま座り、花と共に溶け込むかのように草原の花と朝日を見ていた。
 いつもこの朝の時間には️人が来なかった。
「僕のお気に入りの場所なのに……。」と、嫉妬してしまうほど大切な場所。
 でも今僕が見ている景色は、いつもより眩しく感じた。
 朝日に照らされる彼女の朝日を見る横の姿、人より華の妖精と云われそうな白い肌と透明感のある黒髪に目を奪われた。
「かわいいな。」
 こんな出会いはもう来ないとこの頃の年にもう悟った。
 僕は、どうせならと彼女と二人の秘密の場所にしようと考えた。
 この時はまだ横の姿しか見えていなかった僕は彼女の前まで走り、正面から話しかけた時、酷く緊張されてした。
「こんにちは。僕、一原翔って言うんだ。君は?」
 年は五歳。急に話しかけたら猫のようになる彼女がかわいかった。
「あっ、えっと。」
 と、案の定戸惑らせてしまった。でも、息を一つした後。
「こんにちは。私は一条蒼華。よろしくね。」
「うん、よろしく。」

 そこからはたわいのない話ばかりだった。
 この猫は蒼華ちゃんの飼い猫で名前は、はな。
 他には僕のお母さんが畑でかぼちゃや七草粥の材料を育てて、最近は育ってきたこと。
 蒼華ちゃんのお父様はお母様が大好きで毎日新婚さんみたいに過していること。
 そんな家の事情の話や通っている寺子屋で流行ってる遊びをしたりしていた。
「いーち、にーい、さーん……、もういいかい、」
「まーだだよ。」
 それから、すぐに木に登っていた蒼華ちゃんを見つけた。
「あはは、また翔くんの勝ちだ。」
「蒼華ちゃんにはかくれんぼで勝てないよ。」
なんて、鮮やかに笑うほど仲良くしていた。
 関係が変わったのは、蒼華ちゃんの6歳の誕生日の日だった。