世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

「あの、炎狩人さんって皆さんにとって、どんな存在なんですか?」

 旅館の宿主さんに尋ねると、当たり前とでも言うように、

「そりゃ、ヒーローでしょうよ。どこでも飛び込んでって、世界を救ってくれているんだから」

 ヒーローか。

 ヒーローなんて、架空の存在で、綺麗事って感じで嫌気がさす言葉だった。

 だけど、確かにそうだなって思う。


 確かに、あの燈の玉を見つけてやるっていう、野望に満ちた眼差しはヒーローそのものだったように思う。


 街で会う人々に訊いても、同じような返答。

 勇者。英雄。憧れ。


 いいな。

 私もそんな風になれたらな。そう、純粋に思ってしまった。


 だけど、現実ってのは甘くないんだろうな。

 相当、厳しい訓練をして、それでもなれるかどうかみたいな、多分、そんな厳しい世界だ。

 それだから、街の人達はこんなにも尊敬していて、守ってくれるものだと信じている。


 こんなことを考えずに、挑める性格だったらな。

 なんて、無理なことを思う。

 不安と怖さ。そ んなものが淡く心に入り交ざった。


「おい。飯にしようぜ」

 迅斗が屋台を指さした。

「そうだな」

 端夜もそれに続いて、そのお店の列に並んだ。

 今日は炎狩人の仕事はお休み。

 一日かけても、燈の玉がある場所に着かないから、やむを得ず、というわけだ。

 そういう日も、一か月に、二、三度ほどあるらしい。


「いらっしゃいませ。お、炎狩人さんですか」

「ああ。はい」

「お、じゃあ。一品おまけしますよ」

「あざーす」

 会話をしながらさらに乗せられた料理を食べていく。

 そそくさと迅斗が食べ終わると、お店を見て、走って行った。

「俺、ちょっと買っていきたいものがあるから」

 走り去る迅斗を唖然と見つめる。


 味わいながら、ゆっくりと食べている端夜に単刀直入に尋ねた。

「炎狩人って、どうやってなったんですか?」

「炎狩人の学校に行くと、なれる」

「それって、どういう学校なんですか?」

「入学試験があるが、何歳からだって入れる。七十歳くらいの高齢の人もいたし、五歳くらいの子供もいた。入学してから三年後の卒業時の試験に合格すれば、どんな人でも炎狩人になれる」

 やってみたい。

 そうは思っても、声を出す勇気は出ない。

 中途半端な自分が、常々嫌になる。

「端夜は、どうして炎狩人になったんですか?」

 空を見上げて、息を一つ零した。

「美しい世界を守りたかったから。それと、姉の無念を果たすため」

 そう言って、背中を翻した。

 端夜は、まるで影に包まれているかのような空気感を纏っていた。