世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

 私は、この世界には我欲しかないって、思ってた。

 正義とか善悪なんて綺麗事で、現実はただ長いものに巻かれるだけ。


 でも、本当の現実はそんなに単純じゃなかった。

 正義とか善悪ってのは、本当にあって、人の心にこびりついている。

 約束を破ったり、人に迷惑を掛けたら罪悪感を持つ。

 その時の心はずんと重たくて、気持ちも沈む。

 そして、自責の念に駆られる。



 波のように雲が折り重なった真っ白な空。

 さわさわと吹く風。

 口ずさむ歌をかき消す、大きな雨音。

 走る車のライトの照らされた雨の滝。

 落ちていく夕陽。

 レンガの上にぶら下がる藤の花。

 公園の中に咲く野花。

 道端にできた雑草の花道。

 木の中から飛びだっていく鳥。

 太陽にギラっと照らされた水たまり。

 昼時の水色の空に浮かぶ白い小さなお月様。

 道を歩いたときにすれ違った人のいろんな表情と感情。

 読後感の半端ない、心に響く小説。

 つい口ずさむ心に染み付いた歌。

 太陽に白く照らされた誰もいない校庭。

 勝利へとがむしゃらに向かていく青年。

 真っ白に染まった空に溶けていく夕焼けの光。


 この世界には、美しい部分がたくさんある。

 だけど、この世界には心が抉られるほどの汚い部分もあった。

 そして、定められた運命からは抗えなかった。

 信じていた、最後の希望だったことを裏切られた。

 やっぱり私は、そんな世界を心の底から美しいだなんて言えない。

 でも、このせかいは美しい、って。

 そう言っていると、心が仄かに温かくなる。

 あの世界のことが蘇る。


 この世界が美しいって言葉が正しいかはわからない。

 ただのお呪い(おまじない)のようなもの。

 だけど、私はそう信じたい。


 ねえ、それでもいいのかな。端夜。



 心を仄かに照らすように美しく、星が瞬く。




「この世界は、きっと美しい」



 2つの声が風に流され、波に流され、世界の狭間に流されて、流星のように美しく重なり合う。