世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

「ねえ、閃華」

「私はヤイルと関われないのは嫌だから、輝羽と和解してほしくて」

「無理。キミハ。分かってよ」

 歯を食いしばって、力を溜め込んだような声だった。

 そして、走り抜けていった。

 間違いだった。

 大丈夫なんて。


「待って」

 走って、走って追いかける。

 ただ、私は元の世界の苦しみに囚われているだけなのかもしれない。

 ヤイルのため、ではないのかもしれない。


「まって」

 トン。

 ヤイルの足が止まる。


「輝羽と仲良くなりたいって思えない」

「輝羽と私は合わないの。輝羽と違う意見を言うと、睨まれて自由に思ったことを言えない。それは、私にとって死だよ。苦しんだよ。だから、輝羽と仲よくするのは無理なの」


「そっか」

 望んでるとばかり思って、嫌だということを考えても見なかった。


「輝羽」

 不安そうな顔をして振り返った。

 申し訳なさ、いたたまれなさが募る。 だけど、ごめん。

「輝羽と一緒だと、ヤイルと関われないなら、私はヤイルと一緒にいる。ごめん」

「私のためにとかで輝羽と離れなくていいよ」

 後ろにいたヤイルが言った。

 だけど、私はそんなにいい人間じゃない。

「ヤイルのためじゃないよ。自分のため。後悔したくなくて、それでいて、怖がりだからだよ」

「そっか」

 輝羽が小さく呟いて、私の言葉を呑み下す。


「わかった。輝羽と閃華は関わらない。そして、輝羽は桜夜と閃華がかかわることには関与しない。これなら、桜夜は輝羽と一緒にいる?」

 後ろから燦空が飛び出してきた。

「いいよね」

「いいけど。でも」

「輝羽もこれでいいよね?」


 ありがとう。燦空。

 ヤイルと離れたくない気持ちで、輝羽にはああ言ったけれど、輝羽とも離れたくない気持ちはあった。

 だから、どっちも離さずにいられるのは、よかったって思う。


「私的にも、桜夜と離れたくはないからね」

 私の肩に手を置いて、ウインク。そして、キザな微笑み。

 心の底から嬉しかった。


 燦空に離れたくないって言われたことが、誰も苦しくない選択肢を選べたことが、ちゃんと自分の影響で目の前のことを変えられたことが。

 だからありがとう。