世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

 穏やかな波が海をうろつき、潮の香りが漂った。


 炎狩の郷学院の入試の前日。

 端夜と迅斗達と一緒に燈の玉を見つめるために、私はここにいた。

 視線の先にある終わりのない青に、燈の玉は落ちている。


 現地に着くと、黒の無地のラッシュガードとズボン、スキューバダイビングの道具を手渡される。

「まだ、私炎狩人じゃないので」

「そうなの?でも、あまりそうだし使いなよ」

 受け取って、女子の更衣室に入った。

 その人も、筋肉の筋がはっきりと見えて、体力が必要なことが窺える。

 耐水性のある水着を着て、更衣室を出た。

「足、つけていかないの?」

「つけ方わからなくて、外でつけてもらおうと思って」

「私、つけてあげようか?」

 お姉さんの言葉に甘えて、足のひれ、酸素の入ったタンクをつけてもらう。

「ありがとうございます」

 一緒に更衣室を出ると、迅斗と端夜が出口で私のことを待っていた。

「あ。もしかして端夜と迅斗?」

「あ。宵華か」

「端夜。忘れてたんじゃないでしょうね」

 冗談交じりの怒り口調。

 どうやら、このお姉さんも端夜たちと同じ炎狩の郷学院の出身で、同級生らしい。

「へえー。この子、端夜の弟子なんだ。明日試験なの?マジ⁉頑張って」

 矢継ぎ早に流れてくる言葉に気圧されながら、「頑張ります」と、言った。


「ふー。じゃあ、燈の玉、取ってやるか」

 迅斗が前に海に入った時のトラウマを思い出して、深呼吸した。

「水が塩辛くて、海は好きじゃないんでしたっけ」

 からかうように言うと、「思い出させんじゃねえ」と怒る。


「じゃあ、入るか」

 端夜が海の中に綺麗にダイブする。

「くそ、俺も入るか」

 慌てて入った迅斗に続いて私も海の中に潜った。

 吸い込まれるように、闇の中に進んでいく。


 深い青に包まれて、海の息吹が広がる。

 水面から差し込む光が揺らぎ、コバルトブルーの世界が美しく広がる。

 果てしなく続く青のグラデションに吸い込まれていった。


 海に転がる石の合間を入念に探す。

 ピンクのサンゴ礁、それに群がるクマノミが、幻想世界のようで美しい。


「よっしゃー」という迅斗の声が波紋と重なって、揺れた声が耳に響く。

 海の中を泳いで、陸に上がると、先輩の炎狩人さんに褒められて、誇らしげな顔をしている迅斗がいた。

 嬉しいって言う感情が、体から漏れ出すような満面の笑み。

「あ、キミハここにいたのか」

 振り返ると、水から上がったばかりの端夜がいた。

「迅斗が燈の玉取ったんだな」

 懐かしそうに、心から嬉しそうな笑みを浮かべた。

「そうですね。凄く、嬉しそう」

「そうだな」


 光り輝くが如く、その笑顔は無節く煌めいている。

 迅斗がふと、こちらを見た。

 彼の瞳は、達成感と誇りに満ちていた。


 言葉を交わさなくても、喜びを理解していると、伝わる二人の視線、笑み。


 春にしては、蒸し暑い天気も、迅斗達の祝福を表しているように感じる。

 収まりきらない感情の渦が、心の中で温まる。