高橋真夏。齊藤由愛。真鍋明日香。原日葵。そして、大木静海。
私にその言葉を放つ。
静海はもともと親友だった。
私のことを守ってくれていたのに、ある日突然。
青く晴れた空に、点々と雲が浮かぶ。
今日は土曜日。
予定はないと思い、ソファーでごろごろしていたところ、母におつかいを頼まれた。
「卵とトマトとケチャップ」
母に渡されたメモを見ながら、その商品を探す。
卵とトマトは難なく見つけられたが、ケチャプが見つからない。
焦って、周りを歩き回る。
お店の人に訊くべきかな。だけど。
「あれ、加納じゃん」
「あ、永井くん」
永井亮馬・高橋真夏の彼氏だ。
「何か探してるの?」
「あ、ケッチャップを」
「ケッチャップなら、そこにあるよ」
ソースとマヨネーズの間。
もう少し、探したら見つかりそうだったのにな。ほんの少し恥ずかしい。
「ありがとう」
こんなやり取りをしただけだった。
でも、それが運の尽きだった。
その次の月曜日。
その日から、私に対するクラスの空気が変わった。
のけ者扱いをされ、ヤバい人という目で見られた。
高橋真夏のグループの一人・原日葵がたまたまそのスーパーにいて、その姿を見かけてしまった。
それをきっかけに、いじめの標的が私に変わった。
もともと、高橋真夏のグループは常日頃から、いじめをしているグループだった。
そして、私も、「あんまり関わらないようにしよう」と、避けていた。
それを、他のみんなも行った。 ただ、それだけのことだ。
いきなり、高橋真夏たちのグループの四人が、静海と話している、私の机の前に来て、バンッと叩いた。
「ねえ、亮馬と会ってたって、どういうこと」
高橋真夏が睨む。
「え」
「わたし、見っちゃったんだよね~。加納さんと亮馬君が楽しそうに話してるとこ」
戸惑う私たちに、原日葵がにやにやしながら歩み寄る。
それに対して、私の口から出てきたのは、弱々しい呟きだけだった。
「た、確かに、話したけど。でも、教えてもらっただけで」
言葉を発するうちにどんどん声が細くなっていく。
「亮馬が、私の彼氏だってこと知ってるよね」
鋭く睨んで、机を再度叩く。
「他人の彼氏に色目使うとか、無いでしょ」 「最低じゃん」
色目なんか使ってない。
私がそんな器用なことできるはずがないってわかってるはずなのに。
悔しい。
「君葉が、そんなことするわけないよ」
静海が叫ぶ。
私を睨む四人の顔が歪む。
「え、なに」 「ウザ」
「今度、亮馬と話したら、分かってるよね」
私を睨み、語調を強める。
「ありがとう」
静海に。心の底から思った。
あそこで、あんなふうに叫ぶのは勇気がいると思ったから。
目撃したわけでもないのに、言い張るのは怖いから。
それを、静海は私のためにやってくれた。
その日、私は、静海と一緒に帰った。
永井くんとの経緯、スーパーであったことをそのまま静海に話した。
「やっぱり、色目なんか使ってないじゃん」
「うん。使ってない。ただ、話しただけ」
「私も、一緒に戦うよ」
そう言ってくれていたのに。
次の日。
静海は私の席に来なくなった。
「静海」
私が話しかけても、「ごめん」と言うだけ。
申し訳なさそうに俯いて、「もう、話しかけないで」。
「なんで?」
私が問いかけても、「ごめん」と繰り返すだけだった。
私は唯一の一緒に戦ってくれる味方を失った。
静海は私を拒否するばかりか、高橋真夏のグループに入った。
入った理由はわからない。 でも、裏切られた。
その事実が心を黒く彩る。
四人の言葉よりも、静海に言われることが一番つらかった。
心に刺さって苦しかった。
「一緒に戦おう」って、言ってくれたのに。
どうして、って。
私のこと、信じてくれたんじゃなかったの、って。
私にその言葉を放つ。
静海はもともと親友だった。
私のことを守ってくれていたのに、ある日突然。
青く晴れた空に、点々と雲が浮かぶ。
今日は土曜日。
予定はないと思い、ソファーでごろごろしていたところ、母におつかいを頼まれた。
「卵とトマトとケチャップ」
母に渡されたメモを見ながら、その商品を探す。
卵とトマトは難なく見つけられたが、ケチャプが見つからない。
焦って、周りを歩き回る。
お店の人に訊くべきかな。だけど。
「あれ、加納じゃん」
「あ、永井くん」
永井亮馬・高橋真夏の彼氏だ。
「何か探してるの?」
「あ、ケッチャップを」
「ケッチャップなら、そこにあるよ」
ソースとマヨネーズの間。
もう少し、探したら見つかりそうだったのにな。ほんの少し恥ずかしい。
「ありがとう」
こんなやり取りをしただけだった。
でも、それが運の尽きだった。
その次の月曜日。
その日から、私に対するクラスの空気が変わった。
のけ者扱いをされ、ヤバい人という目で見られた。
高橋真夏のグループの一人・原日葵がたまたまそのスーパーにいて、その姿を見かけてしまった。
それをきっかけに、いじめの標的が私に変わった。
もともと、高橋真夏のグループは常日頃から、いじめをしているグループだった。
そして、私も、「あんまり関わらないようにしよう」と、避けていた。
それを、他のみんなも行った。 ただ、それだけのことだ。
いきなり、高橋真夏たちのグループの四人が、静海と話している、私の机の前に来て、バンッと叩いた。
「ねえ、亮馬と会ってたって、どういうこと」
高橋真夏が睨む。
「え」
「わたし、見っちゃったんだよね~。加納さんと亮馬君が楽しそうに話してるとこ」
戸惑う私たちに、原日葵がにやにやしながら歩み寄る。
それに対して、私の口から出てきたのは、弱々しい呟きだけだった。
「た、確かに、話したけど。でも、教えてもらっただけで」
言葉を発するうちにどんどん声が細くなっていく。
「亮馬が、私の彼氏だってこと知ってるよね」
鋭く睨んで、机を再度叩く。
「他人の彼氏に色目使うとか、無いでしょ」 「最低じゃん」
色目なんか使ってない。
私がそんな器用なことできるはずがないってわかってるはずなのに。
悔しい。
「君葉が、そんなことするわけないよ」
静海が叫ぶ。
私を睨む四人の顔が歪む。
「え、なに」 「ウザ」
「今度、亮馬と話したら、分かってるよね」
私を睨み、語調を強める。
「ありがとう」
静海に。心の底から思った。
あそこで、あんなふうに叫ぶのは勇気がいると思ったから。
目撃したわけでもないのに、言い張るのは怖いから。
それを、静海は私のためにやってくれた。
その日、私は、静海と一緒に帰った。
永井くんとの経緯、スーパーであったことをそのまま静海に話した。
「やっぱり、色目なんか使ってないじゃん」
「うん。使ってない。ただ、話しただけ」
「私も、一緒に戦うよ」
そう言ってくれていたのに。
次の日。
静海は私の席に来なくなった。
「静海」
私が話しかけても、「ごめん」と言うだけ。
申し訳なさそうに俯いて、「もう、話しかけないで」。
「なんで?」
私が問いかけても、「ごめん」と繰り返すだけだった。
私は唯一の一緒に戦ってくれる味方を失った。
静海は私を拒否するばかりか、高橋真夏のグループに入った。
入った理由はわからない。 でも、裏切られた。
その事実が心を黒く彩る。
四人の言葉よりも、静海に言われることが一番つらかった。
心に刺さって苦しかった。
「一緒に戦おう」って、言ってくれたのに。
どうして、って。
私のこと、信じてくれたんじゃなかったの、って。



