世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

 空がゆっくりと闇に溶けていく前のひととき。

 いつもなら燃え上がるような赤に染まる夕焼けが、今日はどこか違う。

 西の空は淡い黄色にくすみ、太陽はまるで疲れたという様に霞む。

 遠くの雲はその光を呑み込むように広がり、まばらな隙間から鈍い輝きが零れてくる。

 街並みも、いつかより静か。

 この黄ばみの向かう先には、ひっそりと夜が控えている。


 シャボン玉が消えていくように、喜びも弾けていく。

 それは美しいけど、呆気なくて。


 夢を見た。

 過去の夢。

 自分がこの世界に来た時の遠い記憶。


「ここ、どこ?」

 戸惑った自分の声が、問いかける。

≪ここはソルレア国です≫

 頭につんと声が響いた。

「戻してください」

≪助けてくれ。そう願ったのはお主だろう≫

「願ったけど、こういう意味じゃない」

 叫ぶ私に耳も傾けず、その声は乱暴に言い放つ。

≪一年後の夏、この国の八月十八日,お前は死ぬ。死んだ後は、元の国に戻れる。以上だ≫

 そう言って、その声は聞こえなくなった。