世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

 端夜が燈の玉を見つけた昨日の夜は、迅斗が宿代を全て払った。

「悔しいけど、嬉しいから、今日は俺の奢りにしてやるよ」

 海の底にいたとしても、聞こえるくらいの元気な声で叫んで、勢いよく札を叩きつけていた。


 探査機に示された、燈の玉の落下地点に向かう途中で、探査機から「町の方々の協力により、燈の玉は無事発見されました」という連絡が入った。

「端夜の次の日に見つけたら、引き分けだろって思ってたのに、挑戦権なしかよ」

「食料無くなってきてたし丁度いいだろ」

「じゃあ、私のあの店で野菜買ってくる」

 私が指さした店の隣には、雑貨店があった。

 野菜を選んだのはそれが理由。

 頼まれた買い物をすぐに済ませてこっそり、雑貨店に入る。

「洗濯のりと、透明の瓶」

 八百屋で少し安めのものを選んで、余った硬貨で洗濯のりと四角い小さな瓶を買う。

「買い出し終わったよ」

 雑貨店で勝ったビニール袋を隠しながら、野菜の入った袋を端夜に差し出す。

「ああ。ありがと」


「じゃあ、昨日の宿に戻るか」

「用があるから、二人は先行ってていいよ」

「そうか。気をつけろよ」

 二人を見送ってから、私は一人で野端を摘む。

 青みがかったやさしい紫と白の小さなツルマメの花。

 大きな葉っぱの部分をよけて、優しく花の部分wp三輪ほど取る。

 とっても、小さい。 だけど、とってもきれいな花。


 ちょっと歩くと、ぺんぺん草のような紫の淡い花を見つけた。

 これもまた摘み、瓶の中に入れていく。


 淡くて、優しい空色の、茎の両端に小さな花。

 透きとおるような紫をした大きめの花。

 青に包まれた花の中に、カタバミの花の黄色が光って、あの夜の夜空のよう。

 あの夜空をイメージして、青い花を下の方にカタバミを上の方に配置していく。

 世界が美しいって、初めてそう思えた場所だったし、夜空がコンセプトというのは意外にいいアイデアかもしれない。


 端夜、喜んでもらえるといいな。

 少し緊張しながら宿に入って、部屋をノックする。

「あ、キミハ帰ってきたか」

 ガチャガチャと鍵を開けて、部屋の中に入る。

「ただいま」


「お。お帰りキミハ。何してたん」

 迅斗がそふぇーに座ってのんびりしながら訊く。

「うん。ちょっとね」

 手で、さっきのハーバリウムを握ったまま、渡す勇気が出ない。

 部屋に入る前は、自信満々で渡すつもりだったけれど、相手を前にすると不安になってしまう。

「端夜。これ」

 そこまで言うのが、やっと。

 ハーバリウムを握った手を端夜の前に差し出して見せる。

 キョトンとした顔。

 戸惑いながらも、「これって、何?」と尋ねる。

 そう補足すると、手に載ったハーバリウムをじっくりと眺めた。

 目を大きく開け得て真剣な顔。

 みられている対象は、ハーバリウムの筈なのに、段々と恥ずかしくなり、顔が赤く染まっていく。

「そうだな。綺麗だな」

「お祝い」

 優しくそのハーバリウムを端夜は受けとった。

「ありがとう」という言葉と共に。


「綺麗だな」

 ハーバリウムを眺めて深く呟く。

「夜空をイメージしてて、青が空でカタバミが星みたいな感じで」

「夜空の星か。いいな」

 うっとりと手に握ったそれを眺めて、黒の巾着袋に仕舞った。