世界は、きっと美しい。~屋上から飛び降りた先は、太陽を紡ぐ異世界でした~

 燈の玉が見つかった、その報告を受けたとき、時刻は五時五十分。

 木に引っかかっていたらしい。

「どうぞお進みください」

 立ち入り禁止のテープをはがして、中に人を促す。

 雷火公園が、一気に活気に満ちていく。

 ざわめきが波のように、段々と飲み込まれていくように、広く広く広がる。


 この空気はなんだか、懐かしい。

 去年の学園祭が、思い出されてしまう。

 静海と回って、本当に楽しかった。

 楽しかった、な。


 静海のことを心から恨んでいるつもりだった。

 だけど、静海のことを思い出すと、楽しいことばかりだった。

 恨んでいるはずなのに、静海が隣にいないことを寂しく感じている。


 本当は全然恨み切れていない。

 そう思えてしまうのは、あの状況から離れられているから。

 今が苦しくないから。

 それだけなのかもしれないけれど。

 また、あの状況に戻ったら、静海のことを恨むのかもしれない。


「どうした?収穫祭、行かないのか?」

 小さく震える私は、端夜の声で我に返った。

 そうだな。

 今は、収穫祭を楽しもう。


 提灯がほのかに揺れる。

 そんな夜の町並みは、夢のようにふわふわとした雰囲気で、美しい。

 赤や金の灯りが、浴衣姿の人々の笑顔を柔らかく照らしてる。

 心がほのかに温まるよう。

 金魚すくいの水面がゆらゆらと揺れて、かすかに漂う綿菓子の甘い香りが鼻をくすぐぐった。

 遠くから太鼓の音が響いて、祭りの熱気を肌で感じる。


「お前は、どこ行きたい?」

「ヨーヨー釣り行きたいです」

 釣るのが好きというわけではない。

 中指にゴムを嵌めて、バスケットボールみたくドリブルする感覚が好きだから。


「お。誰が一番早く釣れるか勝負だな」

 迅斗が、張り切っている姿を見て、頬が緩む。

「勝負するようなもんじゃないだろ」

 そう言いながら、一番乗りで釣り具を取っている端夜。

 取るヨーヨーに目星をつけている端夜のもとに、迅斗が駆けていく。


 楽しかった。

 この時間が終わってほしくない。

 ずっと続いてほしい。

 そう、願ってしまうくらいには。


 迅斗が行きたいと言っていた射的は、二人が百発百中と言えるくらいに上手だった。

 それを見に、ワラワラと人が群がってきていた。

 比べて、射的なんてほとんどやったことのない私は一つもあたらず、隣に並ぶのがすごく恥ずかしかった。

 人が去ってくれて、ほっと一息ついていた私に、端夜がとった景品を全てくれた。

 その中になったお菓子を、三人で楽しく食べたり、面白そうなおもちゃの箱を開けて、遊んだり。


「そろそろメインの花火だな」

 屋台から人が少なくなってきた頃に、時計を見上げて端夜が言った。

 その隣には青錆びがついた銅像があった。

 青の瞳に、信念の強さみたいなものがあふれている、そんな気がした。


 暗い夜空に、花火の光が鋭く舞台の幕を開けた。

 シュッと鋭い音が立って、光が空を一直線に上っていき、「ドン!」という衝撃音とともに、花が開く。

 燃えるような赤、深い青、煌めく金色。

 それぞれの色が混ざり合って、美しく夜空を彩っていく。

 光の粒は星のように散らばっていき、見上げる人々に喜びと驚きを与えていく。

 花火の儚さ。

 一瞬で圧倒する美しさは魔法のようだった。

 自然と「綺麗」という声が漏れてしまう。

 花火に、照らされた二人の横顔。

 その顔は豊かな希望に満ちている。

 私の顔にも、希望があるといいな。

 微かな親しみと憧れの気持ちを心に包み込みながら、私は微笑んだ。