ブルーベリーカラー・レッスン

(へ?)
 美しい彼は青い目をキラキラさせている。複雑なカットをほどこした宝石のように光によって微妙に濃淡が変わる。不思議だ。紫にも見えるし青にも水色にも緑がかった青にさえ見える。(夏に採れる小さな果実の色にも)

(え? 今、盆栽って言った? 私、盆栽に例えられた!?)
微妙な顔をしているのに気づいたのだろう。彼の顔がすうっと青くなる。
「ぼ、盆栽は美しいですよ!! 私の友だちはみんな盆栽が好きです。毎年、盆栽祭りへ行きます!!」
「ぼ、盆栽祭り……」
「えぇ、日本のいろいろなところであります。盆栽祭り」
(ぼ、盆栽。私は盆栽……)

 日本語ネイティブのせいか「ぼんさい」と聞くと「盆栽」と同時に「凡才」も頭に浮かんでしまう。それを正直に彼に言うと彼はますます青くなった。もともとの色が白いから幽霊みたいに見える。
「え、えぇと、あなたは桔梗|《ききょう》のように美しいです!!」
「き、桔梗?」
「ドクダミのように美しいです!!」
「ドクダミ……」
思ったことが全部顔に出てしまう性格は得なのかそうでないのか。ドクダミってそこらへんにわさわさ咲く雑草じゃない? 花なんて咲いたっけ? あとで調べてみよう。

「い、いっしょに盆栽祭り行きましょう!!」
「え、遠慮しておきます」
私、盆栽興味ないし。とても良いものなのかもしれないけど私にとっては草だし。
「な、夏祭りは!? 夏祭りはどうですか!?」
「私たち、当日スタッフですよ? ずっと大通りの観光案内所で待機です」
「……」

 海外出身のひとでも、上手く他人を口説けるひととそうでないひとがいるんだなぁ、としみじみ思いながら私は目の前の彼を見る。
こんなに綺麗な顔をしていてこんなに性格が良いなら引く手あまただろうに、なぜ、わざわざ私を口説いているんだろう? 恋をしたことがない私を。めずらしい生き物だからかな。(食べられません)

「Do you want to hang out with me?」