ユキは、はぁーっとため息をつきました。

(そんなこと、起こるわけないよね)

ユキがしょんぼりしていると、ママの声が聞こえてきます。

「ユキー、クッキーを焼いたの。一緒に食べない?」
「うんっ! 今いくー!」

部屋を出たユキは、ママの待つリビングへ向かいます。あたりに、甘い香りがただよってきました。

「わぁ、いいにおい!」
「ふふっ、ママ特製のチョコクッキーよ」
「うれしい! ママのクッキー大好き」

サクサクで、口に入れるとほろっとくずれるママのクッキーは、どんなお菓子よりもおいしいのです。

「朝からママのクッキーを食べられるなんて、すっごく幸せ」
「ありがとう。ユキは、お部屋で本を読んでいたの?」
「うん。すっごく面白くて、どうしても最後まで読みたかったの。でも……」