愛を知った日

あの日、もし奏を失っていたら俺はどうなっていただろう。あの時のことはなぜか鮮明に覚えている。
奏から渡したいものがあると言われアンクレットをもらった。その時俺はもうすでに大号泣で弱っていく奏の感触に縋るように優しくキスをした。奏は一瞬幸せそうに微笑んで意識を失った。
すぐに先生が心臓マッサージをする。
「奏!奏!死ぬな」
俺も奏の家族も必死に呼びかけていたが奏に繋がっているモニターは非情にも動かない。
俺の頭に両親のことがよぎり恐怖で震えていたその時モニターの波形が戻った。
神様はいるんだなって思った。願いを聞いてくれたと。
心底安心して全身の力が抜ける。
それからの奏はみるみる回復して普通に学校に通えるようになった。
そのうちお互い学業のため会えない日が続いても良好な関係を維持していた。
やがて俺が看護の専門学校、奏が大学の薬学部に進んでからもそれは変わらなかった。
奏は俺よりも1年遅く通信制高校を卒業しその後の進路にも悩んでいたため俺が相談に乗ったりもした。
幼い頃から病気を持っている奏が医療や福祉の分野に興味を持つのは当然と言えるのかもしれませんが1年早く卒業し看護学校に通っている俺としてはおすすめできなかった。