愛を知った日

それからは無我夢中だった。徒歩で行くよりバイクの方が早いと思ったのでバイクに跨り病院へ向かった。
急いで病院内に入ると
「鳳蝶くん!」
お母さんに呼び止められた。
「来てくれて本当にありがとう。奏が鳳蝶くんだけにはどうしても会いたいって…それで本当はだめなんだけど特別なって先生に許可は取ってあるから。行きましょう」
「はい」
お母さん共に病室に入ると奏の家族全員が揃っており、皆涙ぐんで暗い顔をしていた。奏のお父さんは目が真っ赤にして寝ている碧を抱いていた。俺は静かに頭を下げる。
「奏、鳳蝶くん来てくれたよ」
お母さんが小声で呼びかけると奏はゆっくりと目を開け
「鳳蝶くん…」
「奏、大丈夫か?」
「ありがとう…」
もし話すのも辛そうなのに俺だけには頑張って話してくれていた。その声に涙が出た。
弱々しい力で俺の手を握り話す。
「もうちょっと頑張りたかったんだけど…もうだめそうだから最後に鳳蝶くんに渡したいものがあるの…」
奏はお母さんに目配せをする。するとお母さんが俺に小さな箱を渡して来た。それを受け取ったけどすぐには開けなかった。
「だめだなんて言うなよ…俺はこれからも奏といたいんだ。奏がいないとだめなんだよ」