愛を知った日

「じゃあ私はこれで」
「帰るのか?」
「うん。勉強しなきゃだし」
「じゃあね」
蘭は俺達の向こうにいた明美にペコっとして帰って行った。出て行ってすぐ
「あれがウワサの?」
と明美が聞いてきた。思わずビクッとなってしまった俺の代わりに
「そうだよ」
と伊月が答えその瞬間、バシッと背中を叩かれた。
「奏、泣いてたんだからね!」
「今はそんなんじゃないって」
「今は?」
「てか奏と出会ってから奏一筋だし。奏しか見えてない」
「それならいいけど…次奏を悲しまれたら許さないからね」
「はい…もちろんです…」 
そうして誕生日を過ごしていたらつらい気持ちが少しだけ和らいだ。それから俺はまた学校へ行くようになった。
そんなある日。バイトから帰って来た俺のスマホに着信があった。見ると表示されていたのはなんと奏だった。
俺は驚いて恐る恐る出た。
「もしもし…」
「もしもし?鳳蝶くん?夜分にごめんなさいね」
その声は奏のお母さんだった。
「いえ。どうしましたか?奏に何か…」
そう言った瞬間、お母さんの声が震えた。
「実はね…奏の呼吸が弱くなって来ていて…でも奏が鳳蝶くんに会いたいって言ってるの」
そう言った瞬間、俺は何も考えず言葉を発した。
「分かりました。すぐ行きます」