愛を知った日

その後、奏と一緒に寝た。確かにベッドは狭かったがそんな事はどうでも良くなるくらい幸せな時間だった。大切な家族を失った自分はまた大切な人を失うのかと俺も怖いが今の奏に対して自分ができる事はなにもない。だからせめて大丈夫だけは力強くはっきりと言った。この言葉は奏に対しての慰めでもあると同時に自分への慰めでもあった。
やがて奏が寝たのを確認し強く抱きしめて頬に優しくキスをしてから病室を出た。
ついに迎えた手術日。
朝からソワソワしてほとんど何も手に付かないが授業は受けなきゃならない。奏にも進路の事を聞かれた。俺は正直に看護師の専門学校に行く事を告げた。これは両親を失ってからずっと考えていた事だったが奏に出会って病気を知りその思いは確信へと変わった。それから俺は今までしてこなかった勉強を取り戻すように頑張っている。時には明美や伊月に聞きながら。伊月は頭が悪いように見えるがただやらないだけで俺よりは断然良い。学校とバイト、勉強、病院に通う。この4つを両立するのは大変だが奏が大変な時に1番近くで手を差し伸べられる人間になりたい。そのために必要な事なら苦ではなかった。でもその日は結局何も手に付かず伊月や蘭に協力してもらい学校をサボって少し早く病院に向かった。