オレに近寄る奴はあの一件でいなくなった。そばにいてくれるのは、クラスの中じゃ先生とかすみだけだ。ただ、それでよかった。それだけでオレは満足だった。
ある日、かすみは寂しそうな顔で唐突に突拍子もないことを打ち明けた。
「……あのね、進くん」
「ん?なんかあったのか?」
「私ね、お父さんのお仕事の都合で外国に行かなきゃいけないんだって」
あまりに唐突すぎて、オレは一瞬固まる。
「……マジかよ」
「うん。仕様がないことなんだって。ほら、わたしの家、お母さんいないから」
確かにそうだ。かすみには、母親がいない。それなのにかすみをこの国に置いていくことはできないのだろう。きっと、親戚の家に置くよりも、外国に連れて行ったほうがいいのだと思う。オレの目に、無意識に涙が滲む。
「あ、す、進くんっ。あの、またここに帰ってくるから……っ」
そういう問題じゃない。そうじゃないんだよ。会えなくなるってのが嫌なんだよ。
「中学一年生の時には帰ってくるからっ」
長いだろ。次会えるまでが長いだろ。何でだよ。オレと仲良くなってくれた、大切な友達なのに。何でだよ……。
「……わかったよ。そうなんだな、外国行くんだな。でも、帰ってくんだろ。辛いけど、待つ。待ってやるよ。絶対に無事に帰って来いよ」
オレは涙を拭いてなんとか笑顔を作る。
「待ってるからなっ」
すると、かすみはにっこり笑って頷く。
「うんっ」
かすみは、そのまま泣いてしまった。少しすると、かすみの父さんが迎えにきた。かすみは、にっこり笑って手を振る。
「またね、進くん。また六年後に会おうね」
「ああ。待ってるからな」
かすみの姿が見えなくなる。オレは、数時間前に泣いたばかりだと言うのに、もう一度涙がこぼれてしまった。すると、母さんが顔を出す。
「進、お待たせ……って、進、何泣いてんの?」
「泣いてねーし」
「そんなに泣いてるくせに泣いてねーし、じゃ無ぇでしょーが」
「泣いてねーし……」
「あーはいはい、泣いてないんですねー」
母さんは少しため息をついてオレを抱え上げた。
「おろせ!」
「はいはい、下ろして欲しいんですねー。残念ですねー」
母さんが気遣ってくれてるのはわかる。でも、オレは母さんには頼りたくなかった。自分のことだから。母さんを巻き込みたくはなかった。母さんは親らしいことをしてくれる。
でも、これはオレの問題だ。あまり干渉もしてほしくなかった。母さんは、それを知ってこういうことをしてくれている。
それをわかっていても、オレは母さんを否定することしかできなかった。
辛かったから。
それはただの言い訳だ。
でも、そう言って誤魔化しておきたかった。
ある日、かすみは寂しそうな顔で唐突に突拍子もないことを打ち明けた。
「……あのね、進くん」
「ん?なんかあったのか?」
「私ね、お父さんのお仕事の都合で外国に行かなきゃいけないんだって」
あまりに唐突すぎて、オレは一瞬固まる。
「……マジかよ」
「うん。仕様がないことなんだって。ほら、わたしの家、お母さんいないから」
確かにそうだ。かすみには、母親がいない。それなのにかすみをこの国に置いていくことはできないのだろう。きっと、親戚の家に置くよりも、外国に連れて行ったほうがいいのだと思う。オレの目に、無意識に涙が滲む。
「あ、す、進くんっ。あの、またここに帰ってくるから……っ」
そういう問題じゃない。そうじゃないんだよ。会えなくなるってのが嫌なんだよ。
「中学一年生の時には帰ってくるからっ」
長いだろ。次会えるまでが長いだろ。何でだよ。オレと仲良くなってくれた、大切な友達なのに。何でだよ……。
「……わかったよ。そうなんだな、外国行くんだな。でも、帰ってくんだろ。辛いけど、待つ。待ってやるよ。絶対に無事に帰って来いよ」
オレは涙を拭いてなんとか笑顔を作る。
「待ってるからなっ」
すると、かすみはにっこり笑って頷く。
「うんっ」
かすみは、そのまま泣いてしまった。少しすると、かすみの父さんが迎えにきた。かすみは、にっこり笑って手を振る。
「またね、進くん。また六年後に会おうね」
「ああ。待ってるからな」
かすみの姿が見えなくなる。オレは、数時間前に泣いたばかりだと言うのに、もう一度涙がこぼれてしまった。すると、母さんが顔を出す。
「進、お待たせ……って、進、何泣いてんの?」
「泣いてねーし」
「そんなに泣いてるくせに泣いてねーし、じゃ無ぇでしょーが」
「泣いてねーし……」
「あーはいはい、泣いてないんですねー」
母さんは少しため息をついてオレを抱え上げた。
「おろせ!」
「はいはい、下ろして欲しいんですねー。残念ですねー」
母さんが気遣ってくれてるのはわかる。でも、オレは母さんには頼りたくなかった。自分のことだから。母さんを巻き込みたくはなかった。母さんは親らしいことをしてくれる。
でも、これはオレの問題だ。あまり干渉もしてほしくなかった。母さんは、それを知ってこういうことをしてくれている。
それをわかっていても、オレは母さんを否定することしかできなかった。
辛かったから。
それはただの言い訳だ。
でも、そう言って誤魔化しておきたかった。
