オレは、仁藤進。今日、新しい保育園に転入することになった。前の保育園でヤンチャをしすぎて、保育園の偉い人に出てけ、と言われたからだ。保育園の先生は優しくクラスメイトに声をかける。

「新しいお友達ですよ〜」

全員がこちらを一斉に振り返る。でも、物珍しい顔をするだけで、誰も声をあげない。……こんな奴らと友達ごっこをしなくちゃいけねーなんて、な。

「じゃあ、進くん、自己紹介しよっか」

先生に促されて名前を伝える。

「……オレは仁藤進。前のところでやらかしたからここに入れられた。……ただそれだけ」

全員が目をぱちくりさせてこちらを見つめる。すると、1人の背の高い女子が立ち上がってこちらに駆け寄って来た。

「進くん、って言うんだね。わたし、波風かすみ。よろしくね！」

かすみはそっとオレの手を握る。その手はとても柔らかく、とても暖かかった。

「……おう」

そう小さく答えると、かすみは嬉しそうに笑った。そんな無邪気なかすみの苦悩を知ったのは、数日後のことだった。

「巨人だー！」
「巨人は退治しろー！」
「それ、ファイアアタック！」

誰かがヒーローごっこかなんかをしているのかと思い、声の方に目を向ける。
そんな無邪気なかすみの苦悩を知ったのは、数日後のことだった。と、男子三人がかすみを囲んで殴ったり蹴ったり丸めた紙で叩いたりしていた。

「痛い……や、やめてよ……」

「うるせー！」
「巨人は死んじゃえー！」

何やってんだ、アイツら。男子のくせに女子いじめやがって……！オレは男子のところまで一気に詰め寄って、背後から尻を思い切り蹴り上げる。

「いってー！何すんだテメー！」

「うるせぇな」

オレは男子らを殴ったり蹴ったりして成敗する。

「お、覚えてろー！」

「もうかすみをいじめんじゃねーぞ！クソ野郎！」

少しして、男子三人が見えなくなった。オレは、かすみに向き直る。

「ほら、涙拭けよ」

「あ、ありがとう……」

オレは右手で握り拳を作り、ニッと笑う。

「アイツらの言う事なんて気にすんな。大きくたって小さくたってかすみはかすみだし、オレの最初の友達だ。またなんかあったら言えよ。いつでも助けてやるから！」

かすみは一瞬驚いた顔をして、すぐににっこりと笑った。

「うん！ありがとう、進くんっ」