占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

彼は、カードの言葉をしばらく噛みしめるように黙っていた。
そしてふと、小さく口を開いた。

「……でも、やっぱり、少しだけ聞きたいんです。
“もし花さんとうまくいくとしたら”って。
可能性、まだ……あるんでしょうか」

その声には、かすかな迷いと、どうしても手放しきれない願いが滲んでいた。

私は静かにうなずく。

「……わかりました。
もう一度カードを引いてみましょう。
“あなたと、桜井花さんの関係が、これからどうなっていくか”」

彼の視線が、少しだけまっすぐになる。
その眼差しに、私はそっとタロットに手を添えた。

空気がまた、ほんのわずかに変わる。
今度は、さっきとは少し違う熱を帯びている。

——これは、彼の“願い”に対する問いだ。

私はカードを丁寧に切り、三枚を引いた。

「節制」「恋人」「世界」

一瞬、息を呑みそうになる。
美しく、やわらかく、でも力強い組み合わせだった。

「……不思議ですね」
私はゆっくりと口を開いた。

「今のままだと難しいかもしれません。
でも、もしあなたが、焦らずに向き合っていけば——
花さんとの関係は、少しずつ変わっていく可能性があります」

彼が、目を見開く。

「節制は、静かなバランスと調和。
恋人は、感情の交差。
そして世界は……完成と到達を意味します」

私は目を伏せ、静かに続けた。

「それが何を意味するのかは、あなたの選び方次第です。
でも、道が閉ざされているわけじゃない。
それだけは、確かです」