占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

「やっぱり……そうですよね」
その声は、思っていたよりも優しかった。

静かで、どこかあきらめに近い安堵がにじんでいた。

「……少しだけ、情景が見えました」

私の声は、自分でも驚くほど静かだった。
言うべきか迷ったけれど、彼の目を見たとき、言葉が自然とこぼれていた。

「カフェで……花さんが、お客さまと楽しそうに話していました。
笑っていて、とても自然で、心からくつろいでいるような顔で」

一瞬の会話。けれど、そこには確かに温度があった。

「……たぶん、花さんのほうが、そのお客さまに好意を持っているんだと思います。
ほんの短い会話でしたけど、なんとなく、伝わってきました。
彼女の表情や声のトーンが……少しだけ、特別でした」

しばらく黙っていた彼が、ふっと短く息を吐いた。
そして、小さく笑って言った。

「……すごいですね。やっぱり、友人から聞いた通りだ」

私は少しだけ首をかしげる。

「最初は、正直“占いなんて”って思ってたんです。
でも……こうして実際に話してみたら、妙に納得してしまってる自分がいて」

その言葉には、自嘲も感心も、どこか混ざり合っていた。

「……ありがとうございます。ちゃんと、聞けてよかったです」

彼はそう言って、深く頭を下げた。

私は、静かにうなずいた。
でも、その奥で、胸のざわつきはまだ消えていなかった。

彼は静かに目を伏せたまま、言葉を探しているようだった。
その姿には、まだどこか、終わりを受け入れきれない気配があった。

私はカードにそっと手を戻す。
そして、やわらかな声で問いかける。

「……もしよろしければ、この先の恋の流れを見てみましょうか?」

彼が顔を上げる。

「花さんとのことも含めて。
今の想いが、この先どう動いていくのか……その可能性を、一緒に見てみる。
そういう占いも、できますよ」

私は淡く笑ってそう言った。
一方的な“当たる・当たらない”じゃない。
彼の心が、どう進んでいくかをそっと照らす──そんな占い。

彼は、ほんの一瞬だけ迷ってから、ゆっくりと頷いた。

「……お願いします」