占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

やがて、バスがゆっくりと停まり、車内に軽やかなアナウンスが響く。

「まもなく到着で〜す。皆さま、イチゴ狩りをお楽しみくださいね〜」

窓の外には、緑の畝と赤い果実。
春の陽射しが、きらきらと降り注いでいる。

ビニールハウスの受付を済ませ、ハウスの中へ。
赤く実ったイチゴが、低い棚にずらりと並ぶ。

彼女は隣にいた男性と、穏やかに笑い合っていた。
ふたりのやりとりは他愛なく、でもその歩幅は、自然とそろっていた。

——占ってみる。

その気配を感じ取った私は、人のいない隅でカードを1枚だけ引く。

『恋人・正位置』

それは、まるで“答え合わせ”のようなカードだった。

——この出会いは“選択”の始まり。
選べば、進めば、きっと何かが動き出す。

私は彼女の元へ戻り、そっと声をかけた。

「……さっきの方、悪くないかも」

「ほんとに?」

「カードにも、そう出てる。……まだ始まったばかりだけど、素直に会話できる人なら、信じていいと思う」

彼女の頬が、手に持っていた小さなイチゴと同じ色に染まった。

「ありがとう。なんか……ちょっと、希望持てそう」

そう言って、柔らかく笑ったその笑顔は、ほんの少し眩しくなっていた。

——その瞬間だった。

遠くで、誰かの声が聞こえた。