占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

「……お久しぶりです」

「……あの、夏谷さん……クリーム、口元に」

「え? ……あ」

彼は慌てて紙ナプキンで口元をぬぐった。たしかに、飲んでいたラテのフォームが、うっすら唇の端に残っていたらしい。

その仕草がなんだか可笑しくて、私はつい、ふふっと笑ってしまった。

「……すみません、恥ずかしいところを……」

夏谷さんは少しだけ頬を赤らめながらも、つられて笑った。

「……助かりました。でも……」

「ん?」

「さっきみたいに、笑うんですね。……なんか、ちょっと、意外で」

「え? どういう意味ですか、それ」

「うん。お店では、いつも少し距離があるというか……“視えてる人”って感じで、ちょっと神秘的だったから」

私は思わず、口をとがらせる。

「それ、褒めてます?」

「もちろん。……でも今日の笑い方は、もっと普通の、身近な感じで。……なんていうか、ちゃんと“人間”なんだなって、思って」

「ちょっと、ひどくないですかそれ……」

「いや、いい意味です。」

夏谷さんは、ふっと目を細めたまま、少しだけ首をかしげるように私を見つめた。