占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

「……ねぇ、あなたってさ。自分の気持ちにも使えるの? その力」

私は、カップの中で小さく揺れたミルクの波紋を見つめたまま、言葉を失った。

「もし、使えるなら……ずるいよね」

「“好きになる前に摘める”ってことでしょ? そしたら、誰にも傷つかずにいられる」

梨沙の声は、優しくて、でもどこか寂しそうだった。

「でもそれって、誰にも恋できないってことじゃん」

私は、何も答えられなかった。

そのとき。
視線の端で、ふと人の動きを感じた。

隣の席に、さりげなく座っていた一人の男性が、こちらに目を向けていた。

——夏谷さん。

目が合った。

彼はほんのわずかに目を見開いたあと、すぐに柔らかく微笑んで、小さく会釈した。
私は何も知らないふりで、同じように頭を下げる。

「どうしたの?」

梨沙の声に、我に返る。

「……ううん、なんでもない」