占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

昼休み、給湯室。
お湯を入れたマグカップを持ったまま、私はふと横を向いた。

「……あ、結月ちゃん」

そこにいたのは、同僚の河合梨沙だった。
ポットの前でインスタントスープの袋を開けながら、いつものように笑う。

「さっきの会議、地味に疲れたね〜。あの資料、いつ作ってたの?」

「昨日の夜、半分眠りながら」

「やっぱり……すごいよねぇ、あのスピード感。分けてほしいくらい」

軽く笑い合いながら、紙コップの中にお湯を注ぐ。
……そんな、ありふれたやりとりだった。

でも。

ほんの少し、目元に違和感があった。
口角はいつも通りだったけれど、笑っているようで、目が笑っていなかった。

指先の動きが、いつもよりわずかにぎこちない。
そして、言葉の終わり際の“間”。

普通の人なら、気づかない。
でも私は、どうしても見逃せなかった。

「……なにか、あった?」

冗談めかした調子でそう訊ねると、
梨沙は一瞬きょとんとしたあと、ふっと目線を落とした。

「……バレるの、早いよ」

静かにこぼれたその言葉に、私は何も言わず、隣に立つ。