占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

「……あの、焦らず長期戦のつもりなんですよ」
「……占い師さんの言われた通りに」

私の目が、一瞬だけ揺れる。
それは彼の中で、もう“決意”になっていたのかもしれない。

私は、少しだけ頬をゆるめて返す。

「……いいと思います。焦ってもうまくいくことって、あまりないですから」

「はい」
彼はまっすぐにうなずいたあと、少し周囲を見回して、照れたように言った。

「……今日は、プライベートなんですね」

「ええ。普段は、会社で事務をしてるんです。いまは昼休憩で」

「そうだったんですね……なんか、すみません」

「別に構いませんよ。一人で寂しく食べていたので、助かりました。」

私はそう言って、さりげなくフォークに視線を戻した。

「……あ、そういえば」
彼が思い出したように口を開く。
「まだ、お名前……お聞きしてなかったですね」

私は手を止めて、少しだけ息を吸った。

「……名前、ですか」

彼の視線はまっすぐで、軽くも重くもない、ただ、誠実な問いだった。

私は目を合わせたまま、小さく微笑んだ。

「……一ノ瀬です。一ノ瀬結月」

そう名乗ると、彼は小さくうなずいた。

「一ノ瀬さんですね。」

お名前お伺い出来て嬉しかったです。

「お昼のお時間お邪魔しました。じゃあ、僕も戻ります」

「ええ。……ごゆっくり、どうぞ」

「ありがとうございます」

そう言って、彼はもとの席に戻っていく。

その背中を見送りながら、私は再びフォークを手に取った。