占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした

カウンター席。
花さんが注文を取って立ち去ったあと、
夏谷さんが、こちらにゆっくりと顔を向けたのだ。

私と、目が合った。

一瞬だけ、彼の表情に驚きの色が浮かぶ。

でもすぐに、それが照れたような、ばつの悪そうな笑顔へと変わった。
たぶん、彼自身も気づいていたのだろう。
この場所に私がいて、こちらからはすべて見えていたことを。

私は、視線をそらさずに、小さくうなずいた。
笑顔は浮かべなかったけれど、
——ええ、知っていましたよ。
そんな“仕事の顔”で応える。

彼は少しだけ戸惑ったように席を立ち、
手にメニューを持ったまま、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

「……ばれちゃいましたか」

彼が、私の向かいの席に腰を下ろしながら、苦笑交じりに言う。

私はドリアの皿の向こうから、静かに彼を見つめて言った。

「……まあ、そうですね」

ほんの少しだけ、口元に影を落としながら。

彼は少し気まずそうに、けれど静かに笑った。