音の放浪者

皆でカラオケに行くと約束した時間の少し前、私は集合場所である駅前へと向かって歩いていた。


駅に着くと蓮城くんがいるのが見えた。

私は蓮城くんとまだ2人きりで話をしたことが無かったので多少の気まずさを覚えた。


私が蓮城くんの方へ近づくと彼は私に気づいたのか、私の方を向いて軽く手を振った。

どうすればいいか分からなかった私はとりあえず手を振り返し、



「おはよう蓮城くん」



私は彼に向かって挨拶をした。



「おはよう」



短いものの、返事が返ってきた。


お互い何かを喋る訳でもなく、沈黙が続く。


気まずい……。


しばらくスマホをいじったり曲を聞いて残りの2人がくるのを待っていると、彩世が集合時間ぴったりにこちらへとやって来た。



「おはよーう！堺彩世、なんとか時間に間に合いましたっ」



彩世はこちらにやって来たかと思うと辺りをキョロキョロと見回した。



「あれ、鳴滝は？」


「あいつまだ来てないんだよ」



蓮城くんはそう言ってからスマホを弄りはじめ、液晶部分を耳に当てる。


それから少し遠くへ移動し、少し話したあとこちらへ戻ってきた。



「律の奴、寝坊したから少し遅れるってよ」


「えー、提案した本人が何やらかしちゃってんの」



まあ待ってあげるけどさー、と言って彩世は自販機に飲み物を買いに行った。