音の放浪者

何だかんだあってやっとこさカラオケに着いた私たちは、タッチパネルでそれぞれ曲を選んでいるところだった。



「そういえば、順番はどうする?」



コーラを飲んでいた彩世がそう言う。



「じゃんけんで勝った人から順番に決めればよくね?」



そう蓮城くんが言い、私たちはじゃんけんをすることになった。



「よし、じゃあ行くよ?じゃーんけーんぽん!」



鳴滝くんの合図に合わせて私はグー、私以外の3人はパーを出した。



「嘘でしょ……」



1人負けってなんか悔しい……


その後3人でじゃんけんをし、順番は鳴滝くん、彩世、蓮城くん、私の順番になった。



「折角勝ったのに1番最初ってなんか鳴滝損してない?」


「俺そんなに歌上手くないからさ、前の人が歌うまかったら嫌なんだよ」



鳴滝くんがそう行っている間に、選曲した曲のイントロが流れ始める。

歌詞がモニターに出てくると鳴滝くんは歌い出す。

本人こそ上手くないと自分を評価していたが、音程は割と取れているし、私は純粋に上手いと思った。

みんなこれくらい上手いとしたら私1番最後嫌なんだけど……。


鳴滝くんが歌い終わると、採点結果が出る。音程、リズム、抑揚、表現力などが加点され、最終的に91点をたたき出した。



「よし!私が91点超えてやる!」



そう彩世は意気込んで歌い始めた。













「……89点。」

そう言って彩世はガックリと項垂れる。



「あと少しだったねえ彩世ちゃん?悔しいねえ?悔しいよねえ?」



鳴滝くんは彩世に勝ったのが相当嬉しかったのか執拗に彩世を煽りまくる。



「かざねえええ、鳴滝がうざいよお」



彩世はそう言って私にしがみつく。
私はそれに対して苦笑いすることしか出来なかった。



「カラオケの点数でワーワー騒いでくだらないな」



蓮城くんが2人に対して呆れながらそう言った。



「あれれ、もしかして低い点数取るのが怖くてビビっちゃってるの?」




そう彩世が煽ると、蓮城くんはフッと笑って



「今に見てろよ」



そう言って蓮城くんは歌を歌い始めた。