転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

 私がミサへの頼みごとを、すぐに言わなかったから? 別に蔑ろにしたつもりもないし、カイルを特別扱いしたつもりも……あ、あるかもしれないけれど……。
 それを差し引いても、ミサの態度には驚いてしまった。

「実は……厨房へ行ったら、友人が結婚を機に、王宮を去ると言われて……」

 あぁ、なるほど。それでかぁ。でも仕方がないよね。友人の人生は友人の人生だもの。こっちが寂しいからって、止めるのは野暮なこと。

「それでミサは、ちゃんと祝福したの?」
「勿論です。彼氏との喧嘩の際は、常に仲裁していたんですから。これで私の肩の荷も降りる、と安堵したのですが……」
「寂しくなったのね」
「はい」

 私は不謹慎にも嬉しくなってしまった。勿論、ミサの不幸を喜んでいるわけではない。素直に感情をぶつけてくれたのが嬉しかったのだ。

 今のミサの姿が本当だとすると、私がこの世界で目覚めてからのミサは、無理をしていた、ということだ。それが、いかに大変か。
 記憶喪失で不安な私に、どれだけ心を砕いて、寄り添っていてくれたのかも。だから、余計に愛おしく、支えたくなった。けれど私に出来ることなど、高が知れている。